死亡退職金や弔慰金を受け取ったときは相続税に注意! 課税される要件と金額を紹介
被相続人の勤務先から「死亡退職金」や「弔慰金」を受け取ることもあります。
これらの金銭は相続財産ではありませんが、一定要件を満たすと相続税の課税を受けてしまいますのでご注意ください。
ここではその要件について解説し、課税対象となる金額の計算方法などもご紹介します。
相続開始後の死亡退職金について
死亡退職金とは、従業員が亡くなった際に、その遺族に対して勤め先であった会社から支払われる金銭のことです。
これは当該従業員がそのまま在籍を続け退職をした場合に支払われるはずであった退職金の代わりとして支払われます。
※一般的な退職金とは別に支給される場合もある。
また、長年会社に貢献してくれたことへの感謝の気持ちを示す、突然の不幸に見舞われた遺族の生活を支援する、などの目的も含まれています。
ただし死亡退職金の支払いは法律で義務付けられているものではありませんので、退職金制度が定められていない会社なら通常支払われません。
会社が規定する就業規則などに従い支給されますので、支払いの有無に関しては就業規則等を確認する必要があるでしょう。
なお、死亡退職金の額は、会社の規定や従業員の勤続年数、役職などによって異なります。
相続税が課税されることもある
死亡退職金は、純粋な相続財産ではありません。
相続財産は生前被相続人が持っていた財産を指しますので、相続開始後に受け取ることとなる死亡退職金はその範囲外です。
そこで相続人だからといって当然に受け取れるものではありませんし、遺産分割の対象にもなりません。
しかしながら、相続税法ではこれを相続財産とみなしています。
死亡退職金に限らずですが、実質において被相続人の財産と同視できる金銭等を税制上は「みなし相続財産」と評価し、相続税の課税対象としているのです。
こうして課税の公平性を保つことが主な目的です。
そのため、死亡退職金の受取人となった方はその他遺産分割によって取得した財産と同じように相続税の計算に含めないといけません。
遺産の総額にみなし相続財産も加え、それが一定額以上(基礎控除額を超える額)になるときは、相続税の申告や納付をしないといけません。
課税の要件
死亡退職金に対する課税についてより厳密に考えていきましょう。
まず押さえておきたいのは「受け取った金銭の名目にはかかわらない」という点です。“死亡退職金”や“退職手当金”など、名称が問題となるわけではありません。
従業員が亡くなったことに対し退職金としての金銭の支払いがあったのなら、みなし相続財産として相続税の課税対象になります。
また、以下の要件を満たすときに課税対象となります。
- 被相続人が亡くなってから3年以内に支給が確定した
- 非課税限度枠を超える死亡退職金があった
支給の有無だけでなく、「支給される金額が確定したタイミングが死亡から3年以内か」に注目しないといけません。
仮に生前に退職をしていたとしても、未だ退職金の額が定まっておらず、相続開始から3年を経過する前に支給額が決まったのなら、みなし相続財産として課税されます。
非課税限度枠とは
前項で示したように、死亡退職金には「非課税限度枠」というものが設けられています。
この枠が活用できるのは相続人のみですが、相続人であればその金額を超える場合に限って課税がなされます。
次の算式を用いて簡単に算出が可能です。
非課税限度枠 = 500万円×法定相続人の数
※法定相続人が相続放棄をしていたとしても、それがなかったものとして計算していい。
※法定相続人に養子が含まれている場合、カウントできる養子は最大でも 2人。実子がいるときは最大 1人までとなる。
以上より、法定相続人が 4人(すべて実子)なら 2,000万円までが非課税で受け取れることになります。
4人のうち 3人が養子なら、計算に含めることができる法定相続人は 2人となり、 1,000万円までが非課税となります。
死亡退職金が支払われるときの計算例
いくつか例を挙げて、死亡退職金がある場合の遺産総額について解説します。
例1)相続人が 1人の場合
相続人や相続財産は次の通りです。
- 相続人は配偶者のみ
- 相続した財産は 3,000万円
- 死亡退職金は 1,200万円支給
非課税限度枠 = 500万円× 1人
= 500万円(①)
遺産総額に加える死亡退職金の額 = 1,200万円- 500万円(①)
= 700万円(②)
遺産総額 = 相続財産 3,000万円+みなし相続財産 700万円(②)
= 3,700万円(③)
課税遺産総額 = 3,700万円(③)-基礎控除 3,600万円
= 100万円
※基礎控除は「 3,000万円+ 600万円×法定相続人の数」で計算。
例2)相続人が複数いる場合
相続人や相続財産は次の通りです。
- 相続人は配偶者・長男
- 相続した財産はそれぞれ 3,000万円・ 1,500万円
- 死亡退職金はそれぞれに 1,500万円・ 1,000万円支給
非課税限度枠 = 500万円× 2人
= 1,000万円(①)
遺産総額に加える死亡退職金の額(配偶者)
= 受け取った死亡退職金-非課税限度枠×(受け取った死亡退職金 /すべての相続人が受け取った死亡退職金)
= 1,500万円- 1,000万円(①)×( 1,500万円 /2,500万円)
= 1,500万円- 600万円
= 900万円(②)
遺産総額に加える死亡退職金の額(長男)
= 1,000万円- 1,000万円(①) ×( 1,000万円 /2,500万円)
= 1,000万円- 400万円
= 600万円(②´)
遺産総額 = 相続財産( 3,000万円+ 1,500万円)+ 900万円(②)+ 600万円(②´)
= 6,000万円(③)
課税遺産総額 = 6,000万円(③)-基礎控除 4,200万円
= 1,800万円
・・・このように、死亡退職金を受け取った方が複数いるときは非課税限度枠も取得割合に応じて按分します。
例3)相続放棄した相続人がいる場合
相続人や相続財産は次の通りです。
- 相続人は配偶者・長男
- 相続した財産は配偶者が 3,000万円、長男は相続放棄したため 0円
- 死亡退職金はそれぞれに 1,500万円・ 1,000万円支給
非課税限度枠 = 500万円× 2人
= 1,000万円(①)
遺産総額に加える死亡退職金の額(配偶者)
= 受け取った死亡退職金-非課税限度枠×(受け取った死亡退職金 /すべての相続人が受け取った死亡退職金)
= 1,500万円- 1,000万円(①)×( 1,500万円 /1,500万円)
= 1,500万円- 1,000万円
= 500万円(②)
※相続放棄した方に非課税限度枠は適用されないため、“すべての相続人が受け取った死亡退職金”の計算に相続放棄をした方の分は含めない。
遺産総額に加える死亡退職金の額(長男)
= 1,000万円(②´)
※相続放棄した方に非課税限度枠は適用されない。
遺産総額 = 相続財産 3,000万円+ 500万円(②)+ 1,000万円(②´)
= 4,500万円(③)
課税遺産総額 = 4,500万円(③)-基礎控除 4,200万円
= 300万円
※基礎控除額の計算でも、相続放棄をした者がいても計算に含めることができる。
・・・このように、非課税限度枠の計算に相続放棄をした方も含めることができますが、その方自身に非課税限度枠が適用されないことにご注意ください。
退職金に関する実情
退職金に関するデータは厚生労働省が公表しています(就労条件総合調査)。
参照: https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/23/index.html
この調査によると、退職金制度を設けている企業は 7割超で、企業規模が大きいほどその割合が高いことがわかっています。
- 1,000人以上・・・ 90.1%
- 300~ 999人・・・ 88.8%
- 100~ 299人・・・ 84.7%
- 30~ 99人・・・ 70.1%
また、産業別には「複合サービス事業」「鉱業,採石業,砂利採取業」「電気・ガス・熱供給・水道業」が 100%近い値で退職金制度を設けていることがわかっています。
金額の相場
退職金としていくらが支給されるものなのでしょうか。データから相場を読み取ってみると、次のように示すことができます。
勤続年数 | 大学・大学院卒 (管理・事務・技術職) | 高校卒 (管理・事務・技術職) | 高校卒 (現業職) |
---|---|---|---|
20~ 24年 | 892万円 | 537万円 | 377万円 |
25~ 29年 | 1,378万円 | 572万円 | 421万円 |
30~ 34年 | 1,642万円 | 768万円 | 592万円 |
35年以上 | 1,822万円 | 1,670万円 | 1,321万円 |
※退職一時金制度のみの値。
※「勤続 20年以上」かつ「 45歳以上の定年退職者」のデータ。
ここからは、退職金として 400万円~ 1,800万円あたりの額が支給される可能性が高いということができるでしょう。
支払い時期の相場
従業員が亡くなったり退職したりしたとき、当該従業員が持っていた権利に基づく請求を受けた会社は、 7日以内に支払い等に応じないといけません。
これは労働基準法に規定されているルールです。
使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。
死亡退職金の請求にもこの規定は適用されますので、相続人の方など、請求権を持つ方が支払いを求めたときは原則として 7日以内に支払いを受けることが期待されます。
ただし、就業規則により退職金の支払い期日が具体的に定められているケースもあります。その場合は所定の期日までに支払意を受けることとなりますので、死亡退職金の受け取り時期について詳しく知りたい場合は被相続人が勤めていた会社に直接問い合わせてみましょう。
誰が受取人になるか
亡くなった方の相続人が受け取るケースが多いですが、相続人に死亡退職金の受け取りが保証されるわけではありません。相続人になる可能性が高いのは配偶者や子ですので結果的に相続人が受け取るケースは多くなりますが、兄弟姉妹や親などが相続人となる場合は受け取れないこともあるでしょう。
法律で決まっているわけではありませんし、受取人に関してもやはり勤め先の会社に問い合わせる必要があります。
各社の規程に基づいて具体的に決められていることがありますし、「遺言による指定」も認めているかもしれません。
そうなると親族の方以外が死亡退職金を受け取る可能性も出てきます。
弔慰金が課税されることもある
会社から「弔慰金(ちょういきん)」を受け取ったときもご注意ください。
※弔慰金:死者への弔いの趣旨で支給される金銭。一般的に香典とは異なるものとして扱われる。
基本的には非課税ですが、次に該当するケースでは相続税の課税対象となります。
- 実質において、死亡退職金や退職手当金等に該当するものと認められる場合
- 以下の金額を超える場合(このときは死亡退職金として扱う)
- 業務上の死亡であるとき:普通給与の 3年分
- 業務上の死亡でないとき:普通給与の半年分
なおここでいう「普通給与」とは、基本給のほか各種手当などを合計した毎月の給与を指しています。
例1)業務中に亡くなった場合
普通給与は 50万円、弔慰金は 2,000万円として計算します。
死亡退職金として扱われる弔慰金
= 2,000万円-( 50万円× 36ヶ月)
= 2,000万円- 1,800万円
= 200万円
※実質においてそのすべてが死亡退職金として支払われていたのなら「 2,000万円」。
例2)業務とは関係なく亡くなった場合
普通給与は 50万円、弔慰金は 500万円として計算します。
死亡退職金として扱われる弔慰金
= 500万円-( 50万円 ×6ヶ月)
= 500万円- 300万円
= 200万円
※実質においてそのすべてが死亡退職金として支払われていたのなら「 500万円」。
なお、算出された金額のすべてに相続税が課税されるわけではありません。
これらは死亡退職金として評価されるのであって、さらに非課税限度枠の適用をすることで課税される額が明らかになります。