03-6410-4418
営業時間
9:30~18:00
休業日
土曜日・日曜日・祝日

小規模宅地等の特例|確認しておくべき要件を土地の種類別に解説

税理士法人 原・久川会計事務所(平塚橋事務所) > 相続 > 小規模宅地等の特例|確認しておくべき要件を土地の種類別に解説

小規模宅地等の特例|確認しておくべき要件を土地の種類別に解説

土地は相続税の課税対象です。そして遺産の中でも比較的価格の大きな財産であり、土地があると納めるべき相続税の額も大きくなる傾向にあります。
そこで相続開始後、土地を受け取った方に検討していただきたいのが「小規模宅地等の特例」の利用です。

相続税の計算をする過程では、財産の評価を行うことになるのですが、この特例を使えば大幅に減額できる場合があります。
ただし特例を適用させるためにはいくつかの要件を満たさなければなりません。

ここで基本的な要件を紹介していきますので、相続開始後の対応、事前の相続対策に役立てていただければと思います。

小規模宅地等の特例とは

「小規模宅地等の特例」とは、宅地の評価額を大幅に下げることを認める特例のことをいいます。

参照:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」

 

宅地の種類や面積など所定の要件を満たした上で、最大80%も減額をすることができる、節税効果のとても大きな特例となっています。
というのも土地の相続に関してはこういった特例が利用できないと、土地を取得した方が相続税を納めるために結局これを手放さざるを得ないケースもあるのです。
相続財産に現金や預貯金などがあまり含まれておらず、唯一の資産として土地が残っていたとしましょう。

これを取得した方が相続税の納税を求められても、現金などが相続で取得できないと、自身の蓄えから納負担をしないといけなくなります。

突然大金を納めなさいと言われても対応できないことがあります。取得した土地を今現在住まいとして使っている場合、これを手放すとなれば死活問題です。

 

生活基盤を守り、こうした問題を防ぐため、厳しく要件を課した上で大きな減額を認めているのです。

小規模宅地等の特例のメリット

同特例のメリットは何と言っても減額割合の高さです。他にも様々な各種控除や特例が設けられていますが、それらと比べても大きな効果が得られると言えるでしょう。「〇〇万円」と金額で指定されるのではなく、「○○%」と割合で指定されていますので、価額の大きな土地であるほど効果が高まるのも特徴的です。

 

被相続人が住んでいた住宅用の土地であれば、面積330㎡に対して減額割合80%を適用することができます。事業用の宅地なら400㎡に対して80%が適用可能です。
また、80%にまでは及ばないものの、貸付をしている一定の宅地に関しては200㎡を限度に50%を減額させられます。

 

この特例を適用させることなく相続税の計算をしてしまうと、納税額も大幅に変わってくることが想定されます。そのため、本当に適用できるかどうかは税理士にチェックしてもらう必要がありますが、遺産に土地が含まれているときはまず「特例が使えないかな?」と考えるようにしてみましょう。

特例を適用するための要件の概要

この特例を適用するには、取得した土地が制度上定義された以下いずれかの土地に該当する必要があります。
まずはこの3種類の土地について、説明していきます。

特定居住用宅地等とは

「特定居住用宅地等」とは、住宅として使っていた土地のことです。

 

要は、“亡くなった方が生活をするための家を建てるのに使っていた土地”などのことです。

亡くなるまで継続して常にその土地の上で生活をしていた、ということまでは求められません。

そのため相続直前に介護のため施設で生活をしていたとしても、賃貸に出していたなどの事情がなければ適用を認めてもらうことができるでしょう。

 

また、“生計を共にしていた親族が住んでいた土地”に関しても同様に、特定居住用宅地等として認めてもらえることがあります。

亡くなった方が直接住んでいたわけではないものの、その故人が生活費などの仕送りをしており、生計を一にしていた親族が自宅として使っていた土地であれば、同特例を適用する余地があります。

 

これらの宅地等に関しては、減額割合80%を、330㎡を限度に適用させられます。

仮に当該土地の面積がぴったり330㎡で、評価額1,000万円であったとすると、80%を減額して評価額200万円にすることができるのです。
なお、330㎡を超えた部分に関しては一切の減額がありません。

特定事業用宅地等とは

「特定事業用宅地等」とは、事業のために使われていた土地のことです。

 

“亡くなった方が事業のために使っていた”、あるいは“亡くなった方と生計を共にしていた方が事業のために使っていた”という場合でも該当します。

 

この事業用の土地を減額する場合も減額率は80%。そして400㎡までの面積に対して適用させることができます。

貸付事業用宅地等とは

「貸付事業用宅地等」とは、他人に貸している土地のことです。

ただし“事業用”とあるように、無償で単に家族に土地を提供していただけではこれに該当しません。

 

“第三者に当該土地を貸して賃料を得ていた”、あるいは“土地の上に賃貸マンションを建ててその建物を賃貸に出していた”といった方法で活用をしている必要があります。

 

なお、上の2種の宅地同様、亡くなった方と生計を共にする親族が貸付業に使用していた土地も、同特例の対象になります。

 

なお、貸付に使っていた場合に関しては、減額できるのは50%までです。限度面積も200㎡までと、上記2つの土地に比べると効果は小さく設定されています。

とはいえ200㎡まで評価額の半分になるだけでも大きな節税効果に繋がります。

小規模宅地等の特例で減額するための要件

土地の区分ごとに、減額をするための要件を整理していきます。

減額の要件

特定居住用宅地等

・同居している親族が、相続で取得した土地に住み続ける

・生計を共にする親族が、相続で取得した土地に住み続ける

・被相続人あるいは生計を一にする親族が住んでいた土地を、配偶者が相続で取得する

※“被相続人と同居していた親族”だと相続後その土地に住み続ける場合に限り適用可能だが、“被相続人の配偶者”だとその土地で住んでいなくても適用可能

・“被相続人と同居していなかった親族”でも、自己所有の家がないなどの要件を満たして特例を適用できることがある(家なき子特例)

・複数の土地を相続する場合でも適用可能

・それぞれの土地が要件を満たしているなら、適用させる土地を選ぶことができる

例:250㎡の土地と200㎡の土地がある場合、250㎡の土地に特例を適用させても限度面積の330㎡に満たないため、他方の土地につき80㎡まで特例を適用させられる

特定事業用宅地等

・相続開始の3年より前から当該土地で事業を始めていること

・相続人が、相続税の申告期限まで事業を続けるとともに土地を持ち続けること

※「相続開始前3年以内」とする規制は、平成31年の法改正により設けられた。ただし土地上の減価償却資産の額が土地価額の15%以上の場合は特例が適用できる

“被相続人のする事業のために使われていた土地”については、その事業を相続税申告期限までに引き継いでおく必要がある

貸付事業用宅地等

・相続開始の3年より前からその土地を賃貸に出していること

・相続人が、相続税の申告期限まで貸付事業を続けるとともに土地を持ち続けること

“被相続人のする貸付のために使われていた土地”については、その貸付事業を相続税申告期限までに引き継いでおく必要がある

親と同居していない場合に満たすべき要件(家なき子特例)

上でも少し触れましたが、被相続人と同居していなかった親族であっても、所定の要件を満たして特例が適用できるケースがあります。
これを特に「家なき子特例」と呼びます。

 

通常は被相続人と一緒に暮らしていた方を対象に同特例は認められるのですが、持ち家がない方に関しては例外的に適用することが認められ、80%の減額効果を得ることができます。ただし、当人が持ち家を持っていないだけでなく、次の要件も満たさなければなりません。

  • 被相続人に配偶者や同居の親族がいない
  • 相続開始前3年以内に、配偶者の持ち家や3親等以内の親族の持ち家などに住んだこともない
  • 当該土地を相続税の申告期限まで保有する
  • 相続開始時点において居住している家につき所有していたという過去がない

なお、家なき子特例が利用できるのは特定居住用宅地等に限られます。事業用あるいは貸付用の土地に関しては対象外です。

小規模宅地等の特例の要件を満たせない土地の例

「別荘」や「相続時精算課税制度で贈与された土地」、「青空駐車場」に関しては、小規模宅地等の特例を適用できませんので注意しましょう。

  • 「別荘」について
    そもそもこの特例は相続人の生活基盤を守ることにありますので、事業用や貸付用として収益に関わるものでもない、別荘については基本的に適用させることができません。
    ただ、別荘であってもその物件を賃貸に出して賃料も受け取っていた場合、貸付事業用宅地等として特例を適用する余地はあります。
  • 「相続時精算課税制度で贈与された土地」について
    相続時精算課税制度は、贈与時の税負担を軽減し、相続時に精算をするという制度です。
    相続時に精算は行うものの、土地の取得自体は相続前に行われています。同特例は、相続や遺贈に伴って取得した土地を適用対象としていますので、相続時精算課税制度を使って贈与された土地に対して適用させることはできません。
  • 「青空駐車場」について
    青空駐車場とは、構築物のない駐車場のことです。止め石が置かれているだけ、ロープを張っただけの駐車場などがこれに該当します。
    駐車場に対して同特例を適用する場合、“構築物”が必要で、構築物かどうかに関しては実質的な判断が下されます。ポイントは事業性が認められる程度の資本の投下がなされているかどうかです。単にロープを張っただけでは難しいですが、費用をかけて土地全体を整備している場合など、駐車場業として営んでいることが明確な場合には特例を適用する余地があります。

小規模宅地等の特例の適用については、簡単に判断できないケースも多いです。

そのため居住用や事業用、貸付用などの種別問わず、土地の相続や遺贈があったときには税理士に一度相談をしてみると良いでしょう。

税理士法人 原・久川会計事務所が提供する基礎知識

  • 記帳代行

    記帳代行とは、日頃行っている仕訳などの業務を税理士に依頼して代行してもらうことを言います。仕入れが多い業種の方は毎日の記...

  • 遺言の書き方

    遺産分割は各相続人の利害が真っ向から衝突する場合も少なくなく、また被相続人の生前最後の意思としてその財産の帰属についての...

  • 国際税務とは

    国際税務は日本の税法で規定されているものではありませんが、簡単に表現するとすれば「2か国以上が関わること」に関係する税務...

  • 税務調査の立会い

    税務調査では、法人の帳簿等をチェックし納めるべき税金を納めているかということを確認します。税務調査は事前通知が原則となっ...

  • 税務顧問(法人向け)

    税務顧問とは法人の経営状況や経営計画を分析し、お客様の税務・会計に関する管理や節税などの税務に関するお悩みへのアドバイス...

  • 節税対策

    節税とは、非課税になる制度や税制の特例などを用いることで税金の額を減らすことを言います。所得税や法人税などでは節税方法を...

  • 記帳代行を税理士に依頼す...

    記帳はご自身でも行うことが出来ますが、税理士に依頼するメリットは何があるのでしょうか。記帳代行を税理士に依頼するメリット...

  • 自計化とは

    「自計化」とは、企業が自身で会計ソフトに会計に関する必要なデータを入力することを言います。税理士などに会計業務を依頼する...

  • 決算書・法人税申告書の作...

    法人では、事業年度ごとに決算を行います。その決算書での法人の利益をもとに法人税を計算し申告・納税を行います。決算書は法人...

  • 税務顧問(個人事業主向け...

    税理士は法人だけでなく個人事業主の皆様も業務を依頼されます。個人事業主は法人ほど仕訳も少なく、決算の額も多くはないことが...

  • 遺産分割協議書作成

    相続税の申告のためには前提として、それ以前に各相続人の間で遺産の分割が確定していることが必要になります。その確定した遺産...

  • 相続人調査

    亡くなった人(以下被相続人)に相続人がいるかいないか、誰が相続人となるかは被相続人の生前残した財産の帰属を考えるうえでと...

  • 生前からの相続対策

    相続においては、被相続人が亡くなる前の生前最期の意思を残しておかなければ相続人達は財産の帰属に関して不利益を被ることもあ...

  • 事業承継でお悩みの方

    事業承継とは会社を後継者へと継いでいくことです。事業承継は大変時間がかかることが多く、中小企業庁も事業承継には3〜5年の...

  • 国際税務とは

    国際税務は日本の税法で規定されているものではありませんが、簡単に表現するとすれば「2か国以上が関わること」に関係する税務...

  • 資産税(相続税・贈与税及...

    海外に資産をお持ちの方は、海外での課税だけでなく日本国内で課税されることもあります。海外で課税されるから日本では完全非課...

  • 外国居住者が株主の場合

    外国に住まわれている方が日本国内の株を所有している場合でもその配当等は日本の税制によって課税されることになります。海外に...

  • 外国人労働者の税金

    日本で働いている外国人労働者の税金は日本人と異なる税率で徴収されています。この区別は日本人か外国人かというわけではなく、...

  • 租税条約とは

    租税条約とは、日本と世界の国々で結ぶ「税」に関する条約のことで、目的は二重課税の防止です。日本では、アメリカやイギリスを...

  • 国際税務の重要性

    国際税務はグローバル化が進んできている現代、とても重要なものとなっています。その要素として以下のようなことが考えられます...

  • 海外取引のある企業の税務...

    海外取引のある企業は注意が必要です。その取引が日本とどこの国で行われたのか。また、どのような取引を行ったかということによ...

  • 税務調査の立会い

    税務調査では、法人の帳簿等をチェックし納めるべき税金を納めているかということを確認します。税務調査は事前通知が原則となっ...

  • 給与計算

    法人は従業員の給与を毎月計算し、従業員に支払わなければなりません。その上、給与を計算するにあたっての壁となるのは「源泉徴...

  • 年末調整

    「年末調整」とは、従業員から毎月源泉徴収して納めた所得税と実際に納付するべき所得税の過不足分を求め、その差額を徴収または...

  • 各種書類作成業務

    法人を経営するにあたって、事業年度ごとに法人税の申告や消費税の申告納税、また毎月の源泉所得税の納付など税務に関する手続き...

  • 法人成り

    個人事業を営んでいらっしゃる方が法人成りすることによって、所得税の節約や社会的な信頼を得ることが出来ます。そのため、個人...

  • 源泉納付書の作成

    法人が従業員の給与を支払うにあたって、所得税や住民税、社会保険料などをあらかじめ天引きして給与を支払います。これを源泉徴...

  • 経営のご相談も原・久川会...

    税理士は税金に関する相談しか受け付けてくれない、というわけではありません。税理士はビジネスパートナーとして、経営に関する...

よく検索されるキーワード

代表税理士

経験・実績豊富!
元国税局専門官が依頼者の味方になります。

久川税理士の写真
Hara Hisakawa Accounting Office
ロゴ
税理士
久川 秀則
所属団体・資格等
  • 平成19年退官、税理士登録
  • 税理士法人 原・久川会計事務所(平塚橋事務所)代表社員 税理士
  • 東京税理士会 荏原支部 所属
  • 東京税理士会 研修講師(非居住者等の税務など)
  • 税理士桜友会 相談部 専門委員
  • 経営支援アドバイザー(弥生会計)
  • 相続手続相談士
  • 終活カウンセラー
略歴
  • 青山学院大学 文学部 英米文学科 卒業
  • 麹町税務署・麻布税務署にて国際税務専門官として国際課税、外資系企業、銀行・証券業の税務調査に従事
  • 東京国税局 課税第二部 法人課税課 源泉所得税審理係長として、大企業の質疑対応、複雑困難な税務調査事例の審理事務に従事
  • 国税庁 調査査察部 国際租税戦略実態解明プロジェクト

    東京国税局 調査第一部 外国法人調査部門の国際税務専門官として、外国企業に対する税務調査を担当~外資系企業や外資系銀行・証券会社などの税務調査、非居住者・租税条約の審理事務に長く携わってきました。

著書
  • Q&A報酬・料金の源泉所得税―事例解説から税務調査まで(大蔵財務協会) 非居住者等のための租税条約ガイドブック―源泉国際課税の重要解説及び主要条文(大蔵財務協会)
  • Q&Aメディア、エンターテイメントビジネスの税務―わかりやすい報酬・料金、非居住者等所得の源泉所得税(大蔵財務協会)

事務所概要

企業の成長を通じて社会的な地位を得て、収入が増え、
やがて自己実現にいたるまでのお手伝いをいたします。

中小企業・個人の皆さまへ

税務・会計

集客支援マーケティング

補助金・助成金サポート、資金調達サポート

給与・年末調整・源泉所得税

国際取引を手掛けるクライアントの皆さまへ

海外投資・海外居住

非居住者・源泉所得税関係

租税条約・外国法人課税関係

久川税理士の写真
事務所名 税理士法人 原・久川会計事務所(平塚橋事務所)
代表者 久川 秀則(ひさかわ ひでのり)
所在地 〒142-0051 東京都品川区平塚3-4-17 1F
電話番号/FAX番号 TEL:03-6410-4418 FAX:03-6410-4420
営業時間 平日 9:30~18:00
休業日 土曜日・日曜日・祝日
税務相談について

税務相談はココナラでのみ、対応させていただいておりますので、ココナラに出品中の税務相談サービスからお問い合わせください。

coconala

LINE

当事務所ではLINEでの相談対応が可能です。(LINE ID:@uoi4097h お気軽に友だち登録して相談してください。

■登録方法について LINEの「友だち追加」からQRコードを読み取っていただくか、友だち追加ボタンをタップしてご登録ください。

友だち追加

ページトップへ