生命保険金かかる相続税|評価方法や節税対策としてのポイントなどを解説
相続手続、相続税に関する対策を考えている方は「生命保険」の利用も考えると良いです。
生命保険を上手く活用することで、遺産分割でのトラブルが回避できたり、相続税の負担を下げられたりします。
ただし生命保険金にも相続税がかかることはありますので、相続対策として加入するなら、あらかじめ評価方法や計算方法については把握しておくことが望ましいです。当記事に要点をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
生命保険金には相続税がかかる
生命保険金を受け取った方は、その金銭に対して税金が課税されるケースがあることを知っておきましょう。
ただしどの税金が課税されるのかは、保険の契約形態により異なります。
次のように、保険料負担者(契約者)・被保険者・受取人の組み合わせによって課される税金が変わるのです。
保険料負担者 |
被保険者 |
受取人 |
かかる税金 |
---|---|---|---|
父 |
父 |
子 |
相続税 |
母 |
父 |
子 |
贈与税 |
子 |
父 |
子 |
所得税 |
※父を被相続人とする。
なお、「生命保険契約に関する権利」も相続税の課税対象となりますのでご注意ください。
保険料負担者 |
被保険者 |
受取人 |
かかる税金 |
---|---|---|---|
父 |
母 |
父 |
相続税 |
父 |
子 |
子 |
相続税 |
※父を被相続人とする。
一定額までは非課税
生命保険金を受け取った場合でも、その全額に対して相続税がかかるわけではありません。次の算式から求められる金額までは非課税とすることができるのです。
「 500万円×法定相続人の数」
もし法定相続人が 1人でもいれば、 500万円を受け取ってもまるまる非課税です。 2人いるときは 1,000万円まで、 3人いるときは 1,500万円までが非課税となります。
ただし、この非課税枠を利用するには、生命保険金に対して相続税が課されるように保険へ加入しないといけません。
保険料負担者と被保険者が同一であること、そして受取人を相続人とすること、この 2つを満たす契約形態にする必要があります。
※受取人が相続人以外の方だと、非課税の適用は受けない。
もし、家族構成が夫婦と子どもであって、父親の相続に備えて生命保険に加入する場合は、契約者兼被保険者を父、そして受取人を母または子どもとします。
なお、被相続人の配偶者である母に関しては配偶者控除の適用により税額をゼロにできる可能性が高いです。
そこで納税資金対策を目的とするなら、子どもを受取人に定めるのが一般的です。
生命保険金の相続税評価額
相続税の計算をするとき、取得した財産についての評価を行い、相続税評価額を計算しなくてはなりません。
こうして導き出された金額を用いて相続税の計算を進めていきます。
例えば土地の場合だと「〇〇円」とすぐにはわかりませんので、所定の評価方法に従い具体的な金額を算出しないといけません。
とはいえ金銭の場合は基本的に額面そのままで相続税の計算ができますのでそれほど悩むことはありません。
生命保険金に関しても、それを一括で実際に受け取ったのなら、その受け取った金額がそのまま評価額として計算に使えます。
しかしながら、生命保険金の受け取り方にもいくつかのパターンがありますので、各パターンにおける評価方法を知っておかないと正しく相続税を計算することができません。
一時金で受け取るパターンでの評価
一度に全部を受け取る場合は「一時金」と呼ばれ、この一時金として受け取るときは評価が簡単です。
分割受取を選択できるケースもありますが、この場合でもその金額の総額で評価を行えば良いだけです。利息が付される場合でも、利息は除いて評価します。
年金で受け取るパターンでの評価
「年金形式」「定期金」での受け取りをする場合は、いくつかの金額を比較して、相続税評価額として採用する金額を選ぶ必要があります。
また、有期定期金と終身定期金でさらに分けて考える必要もあります。
有期定期金:「〇〇年」と受け取れる期間が定められている保険金 |
|
---|---|
①②③のいずれか大きい金額 |
①解約返戻金の金額 |
②定期金で受け取るかわりに一時金で受け取れる場合は、その一時金の金額 |
|
③ 1年あたりの給付金額の平均額 ×残存期間に応じた予定利率による複利年金現価率 |
|
終身定期金:亡くなるまで受け取れる保険金 |
|
①②③のいずれか大きい金額 |
①解約返戻金の金額 |
②定期金で受け取るかわりに一時金で受け取れる場合は、その一時金の金額 |
|
③ 1年あたりの給付金額の平均額 ×平均余命に応じた予定利率による複利年金現価率 |
年金で受け取る場合の計算方法
実際に各金額を比較するには、いくつかの情報を知る必要があります。
そこで保険会社に「解約返戻金の金額」「一時金の金額」「 1年あたりの給付金額の平均額」「予定利率」「給付が終了する年月日」を問い合わせましょう。
そのうえで、 国税庁 Webサイト を使えば、定期金に関しての計算ができます。
国税庁のページに飛ぶと、「定期金給付事由が発生しているもの」から、有期定期金や無期定期金、終身定期金などが選べますので、該当するものを選択してください。
あとは画面上の表示に従い、必要事項を記入していくだけです。例えば解約返戻金の金額、一時金の場合の金額、
1年あたりの平均額などを入力するよう指示されますので、これらを入力していけば、自動で評価額を表示してくれます。
無料で利用できますし、登録なども不要ですので、一度実際にページへアクセスしてみると良いでしょう。
どのように計算するのか、イメージを掴むことができます。
年金受取をしていた方が亡くなった場合の対応
ここまでは、生命保険契約の被保険者が亡くなり、その保険金を受け取った場合の相続税評価額について言及してきました。
しかし二次相続が発生して、同じ保険契約に基づく金銭がさらに次の相続へ影響することもあります。これは主に年金受取をしていた場合に起こります。
例えば二次相続における被相続人が生前、民間の個人年金保険などに基づいて金銭の受け取りをしていた場合、その権利が相続の対象となります。
死亡後もその家族などの継続受取人が保険金を受け取ることができるのです。
この際も、相続税の課税について考慮することを忘れないようにしてください。
一時金として受け取ったのならその額を、年金受取するときは一次相続の場合と同じように評価を行い、相続財産に加算します。
生命保険の節税効果は大きい
相続税対策には①節税対策と②納税資金対策の大きく 2種類がありますが、生命保険はこの両者に対応ができるという利点があります。
生命保険金には相続税が課税されることもありますが、次のようにさまざまなメリットが得られることから、相続税対策としてとても有効な手段であるといえます。
- 一定額まで非課税で受け取れる
- 遺族の生活保障になる
- 相続開始後に現金が支払われるため納税資金として使える
- 保険料を支払うことによって相続財産が減らせる
相続人同士のトラブル防止にも効果的
生命保険を活用することは、税金対策になるだけでなく、遺産分割協議において起こり得るトラブルの予防にもなります。次の事例で考えてみましょう。
事例:被相続人の子ども Aと Bが相続人となり、主な相続財産として 3,000万円相当の自宅が残っている。
Aが自宅に住んでおりそのまま引き続き住み続ける場合、 Bの取り分がゼロになってしまいます。 Aの資金に余裕があれば 1,500万円の現金を Bに支払うこと(これを代償分割という。)で解決できますが、そのような資金を持っていないケースだと相続のバランスが悪くなってしまいます。
しかし、事前に生命保険に加入していれば、 Bに現金を残すことも可能です。
一緒に住んでいる Aに自宅を相続させる旨の遺言書を作成しておいて、生命保険金の受取人を Bに指定することで、相続トラブルも回避できるのです。
相続対策で保険に加入するときの注意点
相続対策を意識して生命保険を利用するなら、「保険の種類」や「保険会社」の選び方にも注意してください。
保険の種類の選び方
生命保険でよくある種類は次の 3種です。
- 定期保険:一定期間の死亡保障が付される掛け捨ての保険。期間満了後、保険金は支払われない。相続対策としては有効ではない。
- 終身保険:亡くなるまで保障が継続する保険。被保険者が死亡すると保険金が支払われる。相続対策としてはもっとも適している。
- 定期付終身保険:一定期間の死亡保障について手厚くした終身保険。所定の期間が終わってからも終身保険として継続するが、その後の保険金額は少なくなる。
相続に「いつ始まるかが予測できない」という特性があることから、相続対策を意識するなら終身保険が適しているといえます。
逆に定期保険だと特定の期間に相続が開始しないと効果がありませんので、相続対策のためにあえてこちらを選択する必要はないでしょう。
また、保険会社の提供するサービスとしては定期付終身保険が主流で、この場合でも相続対策にはなるのですが、一定期間内に相続が始まらないと十分な効果が得られないため要注意です。すでに加入をしている方は、保険証券を探し、終身保険の部分でいくらになるのかをチェックしておきましょう。
相続対策を強化したいときは、終身部分について増額をするか、別の保険と併用するなどの対策を打つことも検討してみてください。
保険会社の選び方
生命保険を使うことで、相続に対してさまざまな観点から備えることができます。同様に、土地の活用などの相続対策の手法もありますが、これらと比べると生命保険は安全性が高いという特徴を持っていますので、資産運用などに知識がなくてもある程度予定通りの成果を得ることができるでしょう。
ただ、保険会社の選び方には注意してください。保険会社が破産しないとも限らないため、その会社がなくなってしまう可能性についても一応考慮したうえで選定を行うべきです。救済の制度もあるため、破産をしたとしても納めた保険料のすべてが無駄になるわけではありませんが、期待していた額より少なくなってしまう可能性は十分に考えられます。
特に終身保険のような貯蓄性が高い保険に関しては保険会社破産による影響度合いが大きいことから、保険契約を交わすときより慎重にならないといけません。
とはいえ決算情報を一般の方が読み取るのはハードルが高いため、雑誌などを複数参照して、財務状況についてチェックをする程度の調査でもかまいません。
意識を向けておくだけでも少しはリスクを下げられるでしょう。