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住宅資金贈与の非課税制度について| 節税効果や適用条件、注意点について解説

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住宅資金贈与の非課税制度について| 節税効果や適用条件、注意点について解説

財産を贈与するにも税金がかかります。厳密には、財産を受け取った方に、財産の価値に応じた贈与税の納税義務が課されます。

財産の価値が大きいほど納税額は大きくなりますので、「家を購入するために使って」と現金を渡されるとそれ相応に大きな税負担がかかってきます。

 

しかし、住宅の取得に向けた資金を贈与する場合、一定額まで非課税にすることができるという制度が設けられています。
税負担を軽減するためにとても有効な制度ですので、ここでその制度の内容、適用条件などを押さえておくと良いでしょう。

住宅取得等資金に関する贈与税の非課税制度とは

住宅取得等資金に関する贈与税の非課税制度とは、「両親や祖父母といった直系尊属から住宅を取得するための資金として贈与された金銭につき、一定限度で非課税とすることができる制度」です。
令和411日~令和51231日までに行われた贈与が当該非課税制度の対象です。

 

原則、贈与をすると、贈与をした金額に応じて贈与税が課税されます。その納税義務は、受贈者(財産を受け取った方)に課されます。

 

当該非課税制度が使えないとなれば、年間110万円の基礎控除は使えるものの、住宅取得のために大金を譲り渡すことで、大きな納税額が発生するでしょう。

 

一般的な計算式に従うと、贈与額が1,000万円なら、税率40%と控除額125万円が適用されますので、次の通りに計算されます。

 

課税価格 = 1,000万円-110万円(基礎控除)

     = 890万円

贈与税額 = 890万円×40%125万円

     = 231万円

 

この計算に従うとなんと、1,000万円の贈与に対して200万円以上の納税をしないといけないことになります。

 

贈与額が3,000万円とした場合、同様の計算で、1,195万円もの贈与税額となります。

 

上の暦年課税と呼ばれる課税の仕組みとは別の、「相続時精算課税」による課税を行うこともできます。

所定の手続を経て適用することで、2,500万円の特別控除を適用することができ、一律20%で相続時に精算をすることになります。

これによりある程度の節税効果は得られますが、それでもやはり大きな税負担が生まれてしまいます。

 

しかしながら、住宅取得等資金の贈与にかかる制度を使えば、「非課税限度額」を差し引いて課税価格を算出できますので、とても大きな節税効果が得られます。

 

なお、同制度はかつて適用期限を「令和31231日」と設定されていました。
しかし「令和4年度税制改正の大綱(令和31224日閣議決定)」にて、適用期限が延長されました。

令和3年いっぱいまでと定められていたのが2年間延長され、「令和51231日」まで利用できるようになったなどの変化がありました。

2つの非課税限度額

住宅の購入を目的とする贈与でも、すべてを課税対象から外すことはできません。課税が回避できる額は、住宅の内容・性能に応じて2つのパターンに分かれます。

 

  1. 省エネ等住宅 :非課税限度額1,000万円
  2. それ以外の住宅:非課税限度額500万円

 

そのため一般的には500万の非課税枠が使えると捉えておくと良いでしょう。
その上で、特別省エネに関する性能を備えた住宅を取得する目的で贈与されるなら、1,000万円まで非課税額が広がります。

 

なお、「省エネ等住宅」とは、次のいずれかを満たす住宅用家屋を指します。

住宅性能証明書などを用いて、要件を満たしていることを証明しないといけないため、贈与税の申告書に添付できるよう、証明資料も用意しておきましょう。

 

省エネ等住宅の適合条件

指標の詳細

「断熱等性能等級4以上」、または「一次エネルギー消費量等級4以上」

・「断熱等性能等級」とは、「断熱等級」とも呼ばれる、省エネ性能を示す基準のひとつ

・等級の数字が大きいほど断熱性が高く、省エネ性能が高いことを表す

・「一次エネルギー消費量等級」とは、省エネ性能を示す基準のひとつ

・石油や石炭、太陽光などから得られる一次エネルギーにつき、どれだけ消費する建物なのか、という点に着目する

・等級の数字が大きいほど消費エネルギーが少なく、省エネ性能が高いことを表す

「耐震等級2以上」、または「免震建築物」

・「耐震等級」とは、地震に対する建物の倒壊・崩壊等のしにくさを表す指標

・等級の数字が大きいほど、地震の力に対して強いことを表す

・等級2とは、極めてまれに起こる地震の力の1.25倍の力に対しても倒壊や崩壊をしない耐震性を意味する

・「免震建築物」とは、揺れを軽減することのできる部材や技術を使って建築された建物のこと

・「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく免震建築物に該当するとの証明が必要

高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上

・高齢者等配慮対策等級(専用部分)とは、バリアフリーなど、高齢者の対しどれだけ手厚い建物であるかを示す指標

・等級の数字が大きいほど、配慮が手厚いことを表す

・等級3とは、移動時の転倒や転落防止への対策、および介助式車椅子使用者への対策が基本的なレベルで施されている場合の等級

 

なお、過去に当該非課税制度の適用を受けおり、贈与税が非課税となった金額があるときは、“限度額からすでに非課税となった分を差し引いた額”が非課税限度額になります。

住宅資金の贈与に非課税枠を適用する条件

非課税制度を利用するための条件について、①受贈者が満たすべき条件と、②取得する家屋が満たすべき条件に分けて詳細を説明していきます。

受贈者が満たすべき条件

受贈者、つまり贈与の受け取り手は、贈与を受けた時点において贈与者の「直系卑属」でなければなりません。

 

要は、非課税措置を受けようとする本人の父親や母親、祖父母からの贈与であることを求めています。

友人はもちろん、兄弟姉妹や子どもなどから自宅の購入資金を受け取ったときは、満額が課税されます。

 

また、配偶者の父母・祖父母は直系尊属にあたりませんので、同制度は適用することができません。

しかしながら、配偶者の父母と養子縁組をしているときは直系尊属となりますので、同制度を利用することはできます。

 

その他、次の条件を満たす必要があります。

  • 贈与を受けた年の11日時点で18歳以上
    ※贈与を受けた時点ではない
  • 贈与を受けた時点で、日本に住所があり、日本国籍も持っている
  • 贈与を受けた年の翌年315日までに当該家屋に住む
    ※翌年315日以降であっても、居住することが確実と見込まれるなら問題ない
  • 贈与を受けた年の所得が2,000万円以下
    ※家屋の床面積が40㎡~50㎡のときは1,000万円以下
  • 平成21年~令和3年分までの贈与税申告において、当該制度による非課税措置を受けていない
  • 配偶者や親族など、特別の関係を持つ人からの取得ではない
  • 贈与を受けた年の翌年315日までに、受け取った金銭を使い、家屋の新築等を行う

取得する家屋が満たすべき条件

非課税制度を適用するには、取得する家屋に対する条件も満たさないといけません。

 

適用できるケースとしては「新築または取得」と「増改築」があります。

 

新築または取得するときの条件

  • 床面積が40㎡~240
  • 床面積の50%以上が受贈者の居住スペース
  • 次のいずれかに該当すること
    • 建築後使用されたことがない
    • 建築後使用されたことがあるが、建築されたのは昭和5711日以降である
    • 建築後使用されたことがあるが、耐震基準適合証明書等により一定の耐震性が認められる
    • 建築後使用されたことがあり、一定の耐震性も備えていないが、取得の日までに耐震改修を行って一定の耐震基準をクリアすることが認められた

 

増改築するときの条件

  • 床面積が40㎡~240
  • 床面積の50%以上が受贈者の居住スペース
  • 増改築の工事は、自らが所有する家屋に対して行われる
  • 一定の工事に該当することが、確認済証の写し等により証明できる
  • 増改築の工事に、100万円以上の費用を要する
    ※当該工事費用の50%以上が、受贈者の居住スペースのために使われたことも必要

非課税制度を利用するときの注意点

この非課税制度を利用する際、条件に適合することはもちろん、次の点に注意するようにしましょう。

住宅ローン控除との併用限度

住宅ローンを組んでいるとき、ローンの内容に応じて所得税を控除できるという仕組みが設けられています。一般に「住宅ローン控除」と呼ばれているものです。

 

非課税制度と住宅ローン控除の両方を利用するときは、各制度の兼ね合いを考慮しなければなりません。

 

具体的には、「ローンの年末残高の合計額」と「新築等にかかった費用などから、非課税制度の適用を受ける金額を差し引いた額」を比較して評価します。
そして前者が後者を超えるとき、その超えた部分については住宅ローン控除が適用できません。

 

後者には、住宅の取得に関して受け取った補助金の額なども加算されます。

税理士に正確な計算をしてもらい、住宅ローン控除との併用についてアドバイスをもらいましょう。

複数人から贈与を受けても非課税限度額は一定

住宅取得のための金銭を父から受け取り、その後祖父からも受け取ったとしましょう。
取得対象の住宅が省エネ等住宅に該当し、父と祖父から受け取った金額がそれぞれ1,000万円であったとしても、各贈与額に対して満額を非課税とすることはできません。

 

着目するのは贈与者ではなく受贈者です。
同じ受贈者に対する贈与がなされたときは、その合計額に対し、1,000万円(または500万円)までを非課税枠として適用します。

税額が0円になっても申告が必要

当該非課税制度を適用し、贈与税額が0円になったとしましょう。

「納めるべき税金が0円になったのなら申告手続も必要ないだろう」と思うかもしれませんが、当該制度を利用したのなら申告が必要です。

 

暦年課税に従い年間110万円以下の贈与をされたときは、税額は0円であり申告も不要です。

 

しかしこのケースでは特別な制度を利用した結果税額が0円になったのであり、原則に従った計算だと納税額が発生しています。
そのため必ず申告は行うようにしましょう。

 

申告を忘れていると、非課税措置が受けられなくなり、贈与税を納めないといけなくなります。
さらに、申告期限を過ぎることでペナルティも加えられ、さらに大きな税負担が発生してしまいます。

税理士と相談して贈与の計画を立てよう

同じ額の贈与でも、特例で設けられた措置を適用するかどうかにより税負担は大きく変わります。

面倒だからと贈与税のことを無視して贈与を行うのではなく、事前に税制をよく把握しておくことが大事です。
贈与税の計算、非課税制度のルール、適用条件などは複雑ですし、他の特例との兼ね合いなども問題になります。

そのため期間に余裕を持ち、あらかじめ税理士に相談を持ち掛けてみましょう。
家の取得には大きな金銭的負担がかかります。しかしプロの意見を取り入れて計画を立てることで、その負担を軽減させられることもあるのです。

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久川 秀則
所属団体・資格等
  • 平成19年退官、税理士登録
  • 久川秀則税理士事務所代表社員 税理士
  • 東京税理士会 荏原支部 所属
  • 東京税理士会 研修講師(非居住者等の税務など)
  • 税理士桜友会 相談部 専門委員
  • 経営支援アドバイザー(弥生会計)
  • 相続手続相談士
  • 終活カウンセラー
略歴
  • 青山学院大学 文学部 英米文学科 卒業
  • 麹町税務署・麻布税務署にて国際税務専門官として国際課税、外資系企業、銀行・証券業の税務調査に従事
  • 東京国税局 課税第二部 法人課税課 源泉所得税審理係長として、大企業の質疑対応、複雑困難な税務調査事例の審理事務に従事
  • 国税庁 調査査察部 国際租税戦略実態解明プロジェクト

    東京国税局 調査第一部 外国法人調査部門の国際税務専門官として、外国企業に対する税務調査を担当~外資系企業や外資系銀行・証券会社などの税務調査、非居住者・租税条約の審理事務に長く携わってきました。

著書
  • Q&A報酬・料金の源泉所得税―事例解説から税務調査まで(大蔵財務協会) 非居住者等のための租税条約ガイドブック―源泉国際課税の重要解説及び主要条文(大蔵財務協会)
  • Q&Aメディア、エンターテイメントビジネスの税務―わかりやすい報酬・料金、非居住者等所得の源泉所得税(大蔵財務協会)

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