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遺産分割が進まないときの対処法~相続税の申告に関する注意点など~

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遺産分割が進まないときの対処法~相続税の申告に関する注意点など~

遺産分割協議が思うように進まないと、各種相続手続きが停滞し、相続税の申告にまで影響が及びます。特に相続税の申告に関しては、10ヶ月以内に遺産分割が完了せず申告をしないでいると無申告加算税や延滞税などのペナルティを受ける危険性があります。

このような負担を避け、大きなトラブルなく過ごすにはどうすればいいのでしょうか。当記事では遺産分割協議がスムーズにいかないときに知っておきたい対処法や注意点を解説していきます。

遺産分割が進まないときに起こる問題

遺産分割を行うには、相続人全員の意見を揃えないといけません。

 

相続人の数が少なく人間関係も良好であれば、すぐに話し合いを終えて次のステップへと進むこともできるでしょう。しかし反対に、なかなか協議が進まず数ヶ月以上遺産分割が完了させられない事態も起こり得ます。

 

そして遺産分割が完了できないことによって、さらに別の問題が引き起こされる危険性があります。

財産移転の全面的な停滞

遺産分割協議が長引くと、相続に関わるさまざまな手続きが停滞してしまいます。

 

たとえば、被相続人名義で管理されていた口座は凍結され、預貯金の引出しも自由にはできなくなります。

※法定相続分の範囲で一部引き出しが可能な場合もあるが、全額は引き出せない。

 

また、車の名義変更や不動産の名義変更をするにも遺産分割協議書が必要で、これらの手続きが滞ることで相続人の生活に支障をきたしたり資産の管理に困難が生じたりする可能性があります。

相続人同士の関係性悪化

協議が長期化することで相続人間での感情的な対立もこじれてしまい、家族関係に悪影響が及ぶケースがあります。

 

日頃の関係性、過去のトラブルが原因で話がこじれるケースも見られますし、感情が絡むと冷静な話し合いも難しくなり、合意がさらに困難になるという悪循環に陥ることもあるのです。

相続税申告の遅れ

遺産分割の遅れが特に深刻に影響するのが「相続税申告」への対応です。

 

相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内と法定されています。そして相続税の申告をするには各自取得した財産の価額を把握する必要があるところ、遺産分割が済んでいないと計算のしようがありません。

 

さらには、期限内に遺産分割が完了していないことで「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった、相続税の負担を軽減するための特例の適用を受けることも、そのままだとできなくなってしまいます。

 

これらの特例は節税効果が高く、たとえば配偶者の税額軽減では法定相続分以下、あるいは16,000万円以下であれば相続税がかからず、小規模宅地等の特例では土地の評価額を最大80%も減額することができるものです。

相続税の申告期限に間に合わせるための工夫

上記の問題が生じないようにするためにも、できるだけ早めに遺産分割が終えられるように努めましょう。目安となるのは相続税の申告期限である「10ヶ月」です。

話し合いの環境を整える

協議を進めるためにも、まず話し合いの環境を見直しましょう。参加者に配慮した場所を選定するようにし、特定の人物にとって有利な場所、たとえば遠方の相続人が極端にアクセスしにくいところなどをあえて指定するようなことは避けましょう。

 

また、特定の人物の身内を固めて、そのほかの相続人が意見をしにくいようなアウェイな雰囲気を作るなどの行為もすべきではありません。

 

話し合いの日時に関しても全員の予定に配慮して調整を行い、余裕を持って向き合えるようにすることで建設的な協議が期待できます。

 

また事前の準備として、それぞれが希望する内容や、反対に譲歩の余地がある点を整理しておくことも効果的です。自分の希望を主張するだけでなく、相手意見に耳を傾ける姿勢も持ちましょう。

専門家の仲介を活用する

感情的な対立が深刻で、当事者のみでの話し合いが困難なケースもあります。

 

そのような場合には弁護士など第三者の立場にある専門家に仲介を依頼しましょう。すでに揉めており裁判沙汰になりそうな状況では弁護士を、落ち着いて対応できる段階にあり相続税に関するアドバイスも受けたいときは税理士を活用すると良いです。

 

専門家が関与するだけでも冷静な話し合いが実現しやすくなり、各々譲歩可能な点も明確になることが多いです。

調停を利用する

話し合いによる協議が難航するときは、家庭裁判所の「遺産分割調停」の利用も検討してみましょう。

 

調停では家庭裁判所が仲介役となり、相続人全員が合意できるように協議を進めるための仕組みです。具体的には、調停委員が中立的な立場で関与して協議を進めていきます。

 

調停委員は各相続人の主張を聞き取り、双方の意見を踏まえた合意案の提案などをしてくれます。訴訟とは異なり合意を目指す手続きですし、相続人間の直接対立を避けつつも協議が可能です。

相続税の申告期限に間に合わないときの対処法

遺産分割が10ヶ月以内に終わらないときでも無申告のまま放置すべきではありません。以下の方法に従い、手続きを進めていきましょう。一つひとつの具体的な対応方法がわからないときは税理士にご相談ください。

法定相続分で申告する

相続税の申告期限に遺産分割が間に合わないとき、未分割のままでかまいませんので申告自体は行ってください。

 

その場合は、申告期限までに仮で、法定相続分で取得したことにして相続税を申告します。

 

その後遺産分割ができたときにあらためて税務署に対して申告を行えば良いのです。相続税に不足があったときは追加で納税し、払い過ぎていた場合は税金を返してもらうこともできます。この手段をとることで、大きなリスクが生じることは避けられます。

「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出

未分割のまま申告を行うときの懸念点は、各種相続税法上の特例の適用です。特例が適用できないと本来の税額より大幅に負担が増してしまうおそれがありますので、特例の適用については猶予してもらえるように手続きをしておきましょう。

 

そのために重要なのが「申告期限後3年以内の分割見込書」です。

※申請書の様式(国税庁HPB1-5 相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出手続」)

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/pdf/2327.pdf

 

この書類で「まだ分割できていない財産があり、3年以内に分割する見込みです」という旨を伝え、ここには分割されていない理由や分割見込みの詳細などを記載します。

 

この書類を提出しておくと、3年以内に遺産分割ができれば、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例といった節税効果の大きな特例の適用を受けることが可能となります。

※そのほか「特定計画山林についての相続税の課税価格の計算の特例」や「特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例」も対象。

 

なお実際に特例を適用するには、この書類を提出することに加え、遺産分割後4ヶ月以内に「更正の請求」を行わなければなりません。これにより納めすぎた税金の還付が受けられます。

遺産分割後に「更正の請求」または「修正申告」を行う

遺産分割が完了した後の申告手続きとして、「更正の請求」と「修正申告」があります。

 

更正の請求

修正申告

すでに行った申告を修正して「納めすぎた税金を還付してもらう」ための手続き

本来もっと高い税金を納めないといけなかったとき、「追加納付」のために過去の申告内容を訂正する手続き

 

上記のとおり、特例を適用して納付額が小さくなったときは「更正の請求」を行います。反対に、特例の適用ができない方であって、法定相続分より多く取得することになった場合などには「修正申告」を行います。

なかなか遺産分割が完了しないときの注意点

遺産分割協議が難航している場面において、相続人が注意しておきたい点をまとめます。

無申告で放置しないこと

申告期限を無申告のまま過ぎてしまうことで複数のペナルティを課される可能性があります。

 

1つは「無申告加算税」です。税務調査前等に自己申告をすればペナルティの大きさを抑えられますが、それでも本来の税額に上乗せで納付義務が課されます。税務調査の指摘後で、さらに本来納付額自体が大きな場合はより大きな税率が適用されてしまいます。

 

無申告加算税に加えて、期限内に相続税が納付されなかったことを理由に「延滞税」も課されます。延滞税も「納付期限から2ヶ月以内かどうか」で適用される負担割合が変動しますので、間に合わなかったとしてもやはり早めの対応が求められます。

特例の適用機会を失わないようにすること

すでに説明したとおり、期限内に遺産分割ができていなくても分割見込書を出しておけば特例の適用が受けられますが、結局3年以内に分割できなかったときはどうなるのでしょうか。実はそのような場合に備えてさらに救済措置が用意されています。

 

3年以内に遺産分割ができなかったときでも、それがやむを得ない事情によるときは、別途申請書を税務署に提出することで適用を受けられる可能性が残ります。

※申請書の様式(国税庁HPB1-5 B1-6 遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請手続」)

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/pdf/28sozoku15.pdf

 

ただし要件が厳しくなり、たとえば相続に関して「訴訟が提起されていること」「和解・調停・審判の申し立てがされていること」「遺言にて遺産分割が禁止されていること」など一定の事由が証明書類等により示せないといけません。

相続人申告登記を行うこと

相続税とは別の制度による注意点ですが、遺産分割が3年以内に終わりそうになく、さらに相続財産に不動産が含まれるときは、「相続人申告登記」を行いましょう。

 

相続人申告登記とは、相続登記の義務を仮で履行するための手続きです。

 

2024年4月から、相続した土地や建物の登記申請は相続人の法的義務になっており、相続開始を知った日から3年以内に不動産の所有権移転登記を行わなければなりません。この義務が果たせないときは過料というペナルティを課されてしまいます。

 

しかし遺産分割が進まずなかなか所有権の移転先が確定しないときもありますので、いったん誰が法定相続人であるのかを申告することで申告義務を果たしたことにできる相続人申告登記という仕組みも設けられました。

 

相続登記に関しても忘れずに対処しましょう。

財産の維持管理も適切に続けること

遺産分割の協議過程でも、相続財産の適切な維持管理を継続することが大事です。特に不動産については管理を怠ることで建物が劣化したり土地の荒廃が進んだりして、財産価値の大きな下落を招くおそれがあります。

 

賃貸物件であれば、家賃収入の管理や入居者対応、修繕工事の実施など。預貯金や有価証券についても、適切な運用や管理を行わないことで、インフレリスクや機会損失が生じる可能性があります。勝手に売却するなどの処分行為を行ってはいけませんが、相続人間で管理方法について合意を形成し、財産価値の維持に努めてください。

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元国税局専門官が依頼者の味方になります。

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久川 秀則
所属団体・資格等
  • 平成19年退官、税理士登録
  • 久川秀則税理士事務所代表社員 税理士
  • 東京税理士会 荏原支部 所属
  • 東京税理士会 研修講師(非居住者等の税務など)
  • 税理士桜友会 相談部 専門委員
  • 経営支援アドバイザー(弥生会計)
  • 相続手続相談士
  • 終活カウンセラー
略歴
  • 青山学院大学 文学部 英米文学科 卒業
  • 麹町税務署・麻布税務署にて国際税務専門官として国際課税、外資系企業、銀行・証券業の税務調査に従事
  • 東京国税局 課税第二部 法人課税課 源泉所得税審理係長として、大企業の質疑対応、複雑困難な税務調査事例の審理事務に従事
  • 国税庁 調査査察部 国際租税戦略実態解明プロジェクト

    東京国税局 調査第一部 外国法人調査部門の国際税務専門官として、外国企業に対する税務調査を担当~外資系企業や外資系銀行・証券会社などの税務調査、非居住者・租税条約の審理事務に長く携わってきました。

著書
  • Q&A報酬・料金の源泉所得税―事例解説から税務調査まで(大蔵財務協会) 非居住者等のための租税条約ガイドブック―源泉国際課税の重要解説及び主要条文(大蔵財務協会)
  • Q&Aメディア、エンターテイメントビジネスの税務―わかりやすい報酬・料金、非居住者等所得の源泉所得税(大蔵財務協会)

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