家や土地などの不動産にかかる相続税はいくら? 評価方法・計算方式を紹介
相続する際、土地や家を取得することがあります。遺産の総額が一定以下なら相続税の申告および納税は必要なくなるのですが、比較的価値の大きい土地や家が遺産に含まれていると、相続税の申告・納税をしなければならなくなる可能性は高くなります。
納税が必要となる税額を把握するために、不動産の評価方法を知っておかなければなりません。
相続財産の価額を評価するときの考え方
相続税の課税財産があるとき、その財産が不動産であろうと動産であろうと、まずは取得する財産の目録を整理し、見積りが必要になります(贈与税が課税されるときも同様)。
地上権や定期金に関する権利、永小作権に関しては相続税法で評価方法が規定されているのですが、その他ほとんどの財産に対しては具体的な評価方法は示されておらず、下の条文にあるように「取得の時における時価」が財産の価額になるとだけ示されています。
(評価の原則)
第二十二条 この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。
引用:e-Gov法令検索 相続税法第22条
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000073)
そこで土地や家についてもこの原則に従うことになるのですが、“時価”の考え方が問題となります。
相続により財産を承継する一般の方が各財産の時価を評価していくのは容易ではありません。鑑定などを行う知識もないでしょう。しかし実際には、一定の計算式にあてはめて簡単に計算ができるようになっています。とは言えその計算方式も複数ありますし、計算を行うために調査しなければならない情報もあります。
そのため以下で簡単に計算方法を示していきますが、不備ある内容で相続税の申告をしないためにも、そして必要以上に大きな額で申告してしまわないためにも、税理士などの専門家に依頼することが重要であるということは覚えておきましょう。
土地に関する相続税の計算方法
まずは土地に関する計算方式について説明していきます。
土地の計算方式には①路線価方式と②倍率方式の2つがあります。
路線価方式
「路線価方式」とは、土地が面している路線につけられた“路線価”をもとに土地全体の評価をしていく方式を指します。
路線価とは、道路に面した土地1㎡あたりの価額のことです。
そこで路線価方式により土地の価額を評価する場合は、路線価に土地の面積を乗じて計算することになります。
ただし、土地の形状などの事情より単純に面積を乗じたのでは正しい評価ができないケースもあります。そのため土地の形状等に応じて定められる「奥行価格補正率」などの補正率で補正を行う必要もあります。
例えば路線価が30万円、奥行価格補正率が1.00、面積180㎡の一般的な宅地の場合、以下の計算式で評価額が算出されます。
評価額 = 路線価×奥行価格補正率×面積
= 30万円×1.00×180㎡
= 5,400万円
多くの市街地には、土地に路線価がつけられており、その内容は毎年国税局長が定めています。全国の路線価は国税庁がWeb上(https://www.rosenka.nta.go.jp/)に公開していますので、すぐに確認することが可能です。
倍率方式
あらゆる土地に路線価が定められているわけではありません。
このときは「倍率方式」により土地の価額を評価します。
そして倍率方式とは固定資産税評価額をもとに土地を評価する方式のことであり、固定資産税評価額に、地価事情に応じて定められる“倍率”を乗じて計算を行います。
例えば固定資産税評価額が2,000万円、倍率が1.1の場合、以下の計算式で評価額が算出されます。
評価額 = 固定資産税評価額×倍率
= 2,000万円×1.1
= 2,200万円
なお、固定資産税評価額とは地方税法の規定に基づき土地課税台帳または土地補充課税台帳に登録される基準年度の価格のことを指します。都道府県税事務所や役所で固定資産税台帳を閲覧すればその内容を確認することができます。
倍率に関しては、路線価と同じくWeb上ですぐに確認することができます。
借地権付きの土地の場合の計算
土地に借地権がついているケースもあります。
借地権とはその名の通り土地を借りる権利のことなのですが、通常は建物の所有を目的とする地上権や土地の賃借権のことを指します。この一般的な「借地権」のほか、細かく分類すると「定期借地権」や「事業用定期借地権等」「建物譲渡特約付借地権」「一時使用目的の借地権」などもあります。いずれも課税対象ですので、権利そのものの取得あるいは権利の付いた土地を取得するときにはこれらの評価方法についても知っておく必要があります。
なお以下では期間の定めや特約、目的の制限などが付されていない、単なる「借地権」について言及していきます。
借地権自体に価値があるということですので、逆に借地権が付いている土地の場合には権利の付いていない土地に比べて評価が下がるということになります。その土地を取得しても借地権を持つ誰かが土地を利用することになり、フルでその土地を活用することができないからです。
そこで評価にあたっては、「自用地(何ら権利がついていない更地)である場合の評価額」から「借地権の評価額」を控除して、「借地権付きの土地としての評価額」を算出することになります。
土地自体の評価方法は上で説明した通りですので、問題になるのは借地権の評価額です。
この点、国税庁が“借地権割合”というものを定めていますので、これを自用地評価額に乗じて借地権評価額は算出できます。
借地権割合は、A(90%)、B(80%)、C(70%)、D(60%)、E(40%)、G(30%)の7段階で定められており、こちらも路線価図で確認可能です。
よって、計算式を簡単に示すと以下のようになります。
借地権付き宅地の評価額 = 自用地評価額−借地権評価額
家に関する相続税の計算方法
次に、家を取得するときの評価方法について説明をしていきます。
とはいえ土地に比べると家の評価はとても単純です。
固定資産税評価額に1.0を乗じて計算するだけですので、固定資産税評価額がそのまま家の評価額となります。
例えば固定資産税評価額1,000万円の家である場合、以下の計算式に従うこととなります。
家の評価額 = 1,000万円×1.0
= 1,000万円
土地の場合にも路線価が定められていなければ固定資産税評価額を把握する必要があります。不動産の所有者には毎年役所から固定資産税に係る納税通知書が届きますので、これを確認することで容易に把握することができますが、相続で取得した場合だと本人以外が対応することになりますので、その通知書が確認できないこともあるでしょう。
このときでも、以下3つの資料から確認をすることが可能です。
固定資産税の課税明細書 | ・固定資産税の納税通知書に添付されている書類 ・課税明細書の「価格」欄の記載内容を確認すれば、固定資産税評価額がわかる |
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固定資産課税台帳 | ・固定資産は市町村長が価格を決定して、その内容が固定資産税台帳に登録される。そのため固定資産税台帳を閲覧することで、固定資産の価格、そして所有者や所在なども確認できる ・担当の課(自治体によるため要確認)にて閲覧可能。ただし閲覧できるとされているのは、納税義務者である本人やその共有者、その他相続人や借地人・借家人などに限られる ・各自治体のWebサイトから申請書がダウンロードできるため、これに必要事項を記入して申し込む |
固定資産評価証明書 | ・固定資産税台帳の内容を確認するには、固定資産評価証明書を取り寄せるという手段もある ・固定資産評価証明書とは固定資産課税台帳に登録されている各種情報を証明する書類 ・固定資産のある役所の担当課にて、申請書を提出することで取得ができる(郵送でも可) |
賃貸物件の場合の計算
宅地に借地権がついているケースがあるのと同様、建物に関しても賃貸に出しているケースがあります。
この場合も考え方としては同じで、所有者以外の他人が借りることができることも考慮して、本来の価額から一定額を控除して評価するという運用になっています。
例えば「他人に戸建住宅を貸していたときの家屋の相続税評価額」については以下の計算式に従って算出されます。
評価額 = 固定資産税評価額×(1-借家権割合)
借家権割合は家の評価額の30%とされています。そして当該物件における賃貸の割合も本来は考慮するのですが、戸建の場合には建物全体を貸していることが想定されますので、借家権割合をそのままの値で計算式にあてはめて計算することができます。
例えば固定資産税評価額が2,000万円の家を貸していたとすれば、以下のようになります。
評価額 = 2,000万円×(1-0.3)
= 1,400万円
次に「他人にアパートを貸していたときの建物の相続税評価額」についてです。
アパート等であっても戸建とおおむね同じ要領で評価額を算出できます。ただし戸建と違って賃貸割合を考慮する必要があります。通常はアパートの1室を賃貸に出すのであり、建物全体を他人に貸しているわけではないからです。
そこで例えばアパートの固定資産税評価額が5,000万円、部屋の床面積の合計が200㎡、このうち貸している部屋の床面積を合計した値が100㎡であったとすれば、以下のように算出されます。
評価額 = 固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
= 5,000万円×(1-0.3×50%)
= 4,250万円
「50%」という値は、100㎡÷200㎡の計算からきています。
不動産が絡む複雑な相続税の計算はプロにお任せください
以上のようにして、相続により取得する土地や家の評価額は算出されます。そこから相続税を導き出していくことになります。
当事務所でも相続に関するご相談を承っております。品川区、港区、目黒区、世田谷区を中心に東京都、神奈川県域の記帳代行、国際税務に関するご相談についても対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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