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生前贈与加算とは|住宅資金贈与は該当する? 加算対象の贈与と相続税の計算について

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生前贈与加算とは|住宅資金贈与は該当する? 加算対象の贈与と相続税の計算について

ある財産を他人に譲渡すると、その財産の価額に対応する贈与税が課税されます。

一方で亡くなるまで財産を保有し続け、相続によりその財産が他人に受け継がれたときは相続税が課税されます。
基本的にはこのような区分で課税される税金が分けられているのですが、贈与税が課税される生前の贈与であっても、一部相続税が課税されることがあります。

 

これを「生前贈与加算」と呼びます。

当記事ではこの生前贈与加算のルールについて紹介し、当該ルールの対象となる人、対象になる財産などを解説していきます。

生前贈与加算とは

相続税は、亡くなった方の配偶者や子どもなどが相続人となり、遺産を取得するときに課税されます。

相続人以外でも遺贈により遺産を得た場合は課税対象です。いずれにしろ相続税は、ある方が亡くなってから起こる財産の移転に着目しています。

 

しかしながら、相続が開始される前に起こる財産の移転が相続税の課税対象になることもあります。

生前に行われた贈与であるにもかかわらず、相続税の計算対象として加算するのです。このルールは「生前贈与加算」と呼ばれたりもします。

 

生前贈与加算は、死亡直前における課税逃れの防止が主な目的であると考えられています。

そのため次に説明する通り、生前贈与加算は相続の直前に行われた贈与に限って行われます。

相続前3年以内の贈与財産は相続税の計算に含める

生前贈与加算については、相続税法にルールが置かれています。

 

(相続開始前三年以内に贈与があつた場合の相続税額)
第十九条 相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前三年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、その者については、当該贈与により取得した財産・・・の価額を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなし、第十五条から前条までの規定を適用して算出した金額・・・をもつて、その納付すべき相続税額とする。

 

引用:e-Gov法令検索 相続税法第19条第1

 

相続が始まる前、つまり被相続人が亡くなった日から遡って3年以内にあった贈与は、相続税の計算に含められるということです。

 

贈与があった時点では相続の開始が確定しておらず、予期もできていないかもしれません。

そのため贈与税が課税されるものとして贈与を行っていると思われますが、生前贈与加算のルールにより事後的に処理方法が変わるのです。

生前贈与加算の対象者

生前贈与加算はあらゆる人物に適用されるわけではありません。

 

上に示した相続税法の条文にあるように、対象者は「相続や遺贈で財産を得た方」です。

 

つまり、「生前贈与自体は受けているものの、相続や遺贈により遺産を取得していないのであれば生前贈与加算の対象者にはならない」ということです。

 

例えば被相続人の子どもの配偶者に対して生前贈与を行っていても、当該人物は相続人になることはできませんし、別途遺言書の作成により遺贈を行わっているなどの事情がない限り、贈与税としての処理のみで問題ありません。

 

被相続人の孫についても同様です。孫は代襲相続により相続人としての立場を引き継がない限り相続人にはなりませんので、遺贈により遺産を受け取っていない限り生前贈与加算の対象にはなりません。

 

「相続人」とも規定されていませんので、仮に生前贈与を受けた相続人がいたとしても、一切の遺産を取得していないのなら生前贈与加算の対象から外れます。

生前贈与加算の対象となる贈与財産

次に、財産の内容に着目してみます。

 

生前贈与加算の対象になる贈与財産は幅広いです。上に挙げた人物に対して行われた、相続の前3年以内にあった贈与なら基本的にすべて生前贈与加算の対象です。

 

また、贈与税が課税されていたかどうかも関係ありません。そこで注意したいのが「110万円以下の贈与でも生前贈与加算の対象になる」という点です。

 

暦年課税方式による贈与の場合、110万円の基礎控除を適用することができ、1年あたり110万円以内の財産であれば非課税で贈与を行うことができます。
しかしながら、生前贈与加算の対象になることで、その財産についても相続税の計算に含めないといけなくなります。

 

一方、贈与税に関する特例で非課税の適用を受けていた金額については対象外になるケースがあります。

 

例えば、「教育資金に関して一括贈与を受けて非課税の適用を受けていた場合」です。
贈与者が受贈者の直系尊属(両親や祖父母など)であって、教育資金管理契約を締結し、教育資金に充てるためにした贈与の場合、1,500万円まで贈与税を非課税にすることができます。その他受贈者が30歳未満であることや所定の申告書を提出するなど、要件を満たす必要はありますが、大きな節税効果が得られます。
この制度を適用したときは、相続前3年以内の贈与であったとしても、最大1,500万円まで生前贈与加算の対象外となります。

 

同様の制度として、結婚や子育て資金に関する贈与を一定額まで非課税にすることができる制度もあります。

そしてその非課税の適用を受けた金額についても、生前贈与加算の対象から外れます。

住宅資金贈与と相続税の関係

まとまった贈与を行う場面として「住宅の取得」も挙げられます。住宅を購入するための資金を贈与する、あるいは住宅そのものを贈与することもあるでしょう。

 

贈与税に関して、これらの贈与に対して一定額まで非課税とする特例も設けられています。この特例は生前贈与加算にも影響してきます。

住宅取得等資金の非課税枠内は対象外

被相続人が3年以内に贈与した財産でも、それが「住宅取得等資金」として非課税の適用を受けていたとき、その非課税の枠内で生前贈与加算の対象外となります。

 

この非課税制度は、父や母、祖父母などの直系尊属から、住宅を取得するために金銭を贈与された場合に利用できます。

取得対象の不動産が同制度における「省エネ等住宅」に該当するときは1,000万円まで、それ以外の住宅については500万円までが非課税となります。

 

仮に、断熱等性能等級4以上、免震建築物であるであるなど、対象の不動産が省エネ等住宅である場合において2,000万円の資金が贈与されたとしましょう。
まずは贈与税の計算を行います。特例により1,000万円は非課税とすることができ、残りの1,000万円に関して贈与税を課税します。
その後3年以内に相続が開始されると、当該贈与も生前贈与加算の対象に含まれるのですが、非課税枠内にある1,000万円は除外し、残りの1,000万円に関して相続税を課税します。

贈与税の配偶者控除額も対象外

不動産に関する贈与では、上の特例のほか、「配偶者控除」も利用できます。

 

こちらは夫婦間での贈与に限定されますが、要件を満たせば基礎控除額110万円に加え2,000万円をさらに控除することができます。

 

この配偶者控除を適用するために満たさないといけない要件は次の通りです。

 

  • 婚姻期間は20年以上であること
  • 居住用不動産そのものの贈与、または居住用不動産を取得するための資金が贈与されたこと
  • 贈与を受けた翌年315日までに、当該不動産に受贈者が現に住んでおり、その後も引き続き住む見込みがあること
  • 過去に同じ配偶者との間で配偶者控除を適用していないこと

 なお、この控除額を上回って贈与税が課税された分に関しては、生前贈与加算の対象になります。

生前贈与加算があったときの相続税の計算

相続税は「課税遺産総額」を基に計算します。

 

そして課税遺産総額を把握するには、遺産の総額から非課税財産や葬式費用、債務などを控除し、その一方で生前贈与加算の分を加え、「正味の遺産額」をまずは導き出します。

 

この正味の遺産額から基礎控除を適用することで課税遺産総額は算出されます。

 

そのため相続人が相続により受け取る遺産、遺贈により受け取る遺産などと同じ形で相続税の計算が行われます。
遺産に係る基礎控除は最低でも3,000万円。

法定相続人の人数に応じて3,600万円、4,200万円と増額されていきますので正味の遺産額がその金額以下であれば結局相続税の負担は生まれません。

 

しかし純粋な相続財産のみだと非課税になるところ、生前贈与加算が行われることによって課税遺産総額が発生する可能性もあります。

そのため、生前贈与による節税対策を取っているつもりでも、その後すぐに相続が始まってしまうと意味をなさなくなってしまいます。

過去に納めた贈与税の額は控除される

贈与税が課税された財産につき、相続税でも課税されるとなれば、二重課税となり税負担が増すのではないかと疑問に思うかもしれません。

 

しかし相続税の計算上、過去に納めた贈与税については税額控除が適用できます。そのため過去に贈与税を納めているからといって負担がさらに増すわけではありません。

2024年からは生前贈与加算の期間が広がる

執筆時点(2023年)における生前贈与加算のルールは以上で説明した通りです。しかし、2024年からはルールが変わります。

「令和5年度税制改正の大綱」にて次のように見直しの意向が示されています。

 

相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内(現行:3年以内)に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額(当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、当該財産の価額の合計額から 100 万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとする。

 

引用:総務省「令和5年度税制改正の大綱」

 

法改正により、生前贈与加算の対象期間が「相続の前3年以内」から「相続の前7年以内」に延長されます。

202411日以降に行われる贈与について適用されますので、このルール変更の影響が及ぶのはそのさらに数年後です。

しかし期間が延長されることによって、今後はさらに暦年課税制度を活用した生前贈与による相続税対策は取りづらくなるでしょう。

 

なお、現行法から延長される4年分については、「贈与額がトータル100万円以下であれば加算しない」という扱いになっています。

生前贈与を行っていた方にとっては嬉しい配慮ですが、生前贈与加算のルールがより複雑になります。

 

 

当記事で説明したように、相続税と贈与税は別物でありながらも密接に関わり合っています。

過去に課税された分について再度計算や申告作業が発生することもあります。税の計算に慣れていない方からすると複雑でややこしく感じることでしょう。

困ったことがあれば税理士に相談して解決することをおすすめします。

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  • 平成19年退官、税理士登録
  • 税理士法人 原・久川会計事務所(平塚橋事務所)代表社員 税理士
  • 東京税理士会 荏原支部 所属
  • 東京税理士会 研修講師(非居住者等の税務など)
  • 税理士桜友会 相談部 専門委員
  • 経営支援アドバイザー(弥生会計)
  • 相続手続相談士
  • 終活カウンセラー
略歴
  • 青山学院大学 文学部 英米文学科 卒業
  • 麹町税務署・麻布税務署にて国際税務専門官として国際課税、外資系企業、銀行・証券業の税務調査に従事
  • 東京国税局 課税第二部 法人課税課 源泉所得税審理係長として、大企業の質疑対応、複雑困難な税務調査事例の審理事務に従事
  • 国税庁 調査査察部 国際租税戦略実態解明プロジェクト

    東京国税局 調査第一部 外国法人調査部門の国際税務専門官として、外国企業に対する税務調査を担当~外資系企業や外資系銀行・証券会社などの税務調査、非居住者・租税条約の審理事務に長く携わってきました。

著書
  • Q&A報酬・料金の源泉所得税―事例解説から税務調査まで(大蔵財務協会) 非居住者等のための租税条約ガイドブック―源泉国際課税の重要解説及び主要条文(大蔵財務協会)
  • Q&Aメディア、エンターテイメントビジネスの税務―わかりやすい報酬・料金、非居住者等所得の源泉所得税(大蔵財務協会)

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