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相続税の申告が必要なケースと不要なケースを紹介! 特例や控除の利用に注意

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相続税の申告が必要なケースと不要なケースを紹介! 特例や控除の利用に注意

相続開始後は、遺産の内容を調査し、遺産分割協議を経て相続人それぞれの取り分を話し合います。

その後、取得した遺産の内容に応じて、相続税の計算を行います。

 

ただ、相続税の申告や納付が誰にでも義務付けられるわけではありません。相続税の申告が必要になるケースもあれば、申告が不要になるケースもあります。

厳密な計算は税理士に任せる必要がありますが、申告の必要性を簡単に判断する方法を以下にまとめます。

相続税の申告が必要なケース

まずは相続税の申告が必要になるケースについて紹介していきます。
ポイントは“納付すべき税額があるかどうか”と“申告が必要な特例や控除を利用しているかどうか”です。

納付すべき相続税があるとき

相続税は、遺産の総額に対して債務額や非課税財産の価額、基礎控除額などを差し引き、多段階的に計算を行った上で納付額が定まります。
各種控除等を適用した結果相続税の納付額が0円となることもあれば、「〇〇万円」などと納付すべき額が発生することもあります。

 

そして当然ながら、納付すべき相続税があるとき、相続税の申告も行わなければなりません。

配偶者控除を利用するとき

配偶者が遺産を取得したときは、「配偶者控除」(No.4158 配偶者の税額の軽減)が利用できます。

 

相続税に関する控除の中でももっとも大きな効果を持ち、この控除があることによって配偶者が相続税を納めるべきケースはかなり限定されます。

 

具体的には、取得した遺産額が、次のいずれか多い金額までなら相続税がかからないという内容になっています。

 

  • 16,000万円
  • 配偶者の法定相続分相当額

 

少なくとも1億6,000万円までなら配偶者は遺産を取得しても相続税を納めなくて良いのです。

 

ただし、申告手続は別です。
配偶者控除を適用するときは、別途申告が必要になります。

 

税務署に対して、①相続税の申告書、②戸籍謄本等、③取得した財産が分かる書類(遺言書の写し、遺産分割協議書の写しなど)を提出します。

※遺産分割協議書の写しを提出する場合、相続人全員の印鑑証明書の添付が必要

小規模宅地等の特例を利用するとき

遺産に土地が含まれているときは、遺産の総額が大きくなりやすく、納付すべき相続税も発生しやすくなります。
ただ、一定の場合には「小規模宅地等の特例」(No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例)を利用することができ、土地の評価額を大幅に下げることが可能です。

これにより土地を取得するときの税負担を軽減することができます。

 

小規模宅地等の特例が利用できるのは、当該土地が相続開始の直前に、被相続人等が居住または事業に使っていた場合などです。
具体的には、この特例で定義されている「小規模宅地等」のうち下表の区分のいずれかに該当する必要があります。

また、区分別に減額割合とその減額が適用できる限度面積も決まっています。

 

小規模宅地等の区分

減額割合

限度面積

特定居住用宅地等

80

330

特定同族会社事業用宅地等

80

400

特定事業用宅地等

80

400

貸付事業用宅地等

50

200

 

減額できる面積に限りがあるものの、この特例を利用することができれば大きな節税効果が得られます。

結果的に非課税となり納付額が0円になることもあり得ます。

 

しかしながら、この特例を利用するときは、申告は必要です。
少なくとも、①相続税の申告書、②戸籍謄本等、③土地を取得したことが分かる書類(遺言書の写し、遺産分割協議書の写しなど)については提出しないといけません。土地の種類に応じてその他必要になるものも出てきます。

相続時精算課税制度を利用していたとき

相続まで待たなくても、生前に贈与を行うことで財産を譲渡することは可能です。ただしこの場合は贈与税が課税されます。一般に、相続税よりも贈与税のほうが税負担は大きくなりやすいのですが、「相続時精算課税制度」(No.4301 相続時精算課税の選択と相続税の申告義務)を利用することで贈与税の負担を軽くすることができます。

 

ただ、その名の通り“贈与した財産の精算を相続時に行う”という制度ですので、相続税の計算をするときに過去の贈与分を考慮しないといけません。
その影響を受けて、納付すべき相続税が発生することもあります。

基礎控除等の適用により申告が不要になるケースでも、相続時精算課税制度の影響で申告が必要になるケースがありますので要注意です。

 

なお、相続財産に加算して相続税の計算を行っても基礎控除額以下になるのであれば相続税の申告は必須とはなりません。
しかしながら、“相続時精算課税を適用した財産に関してすでに贈与税を納めているとき”、相続税の申告をすることで還付が受けられるケースもあります。

 

そのため贈与税との兼ね合いも考慮しつつ、制度をよく理解して間違いのないように計算を行うことが大事になってきます。

農地の納税猶予の特例を利用するとき

「農地の納税猶予の特例」(No.4147 農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例)を利用したときも、申告が必要です。

 

農地の納税猶予の特例は、農地を相続した(または贈与された)後継者に対して、相続税(または贈与税)の納税を猶予するといった内容の特例です。

後継者が農業を継続すること、農業を行う人に農地を貸し出すことなどが条件となります。

 

相続税を納める必要がなくなったとしても、「所定の事項を記載した相続税の申告書の提出」と「猶予してもらう税額に見合った担保の提供」などの手続が必要です。

特定計画山林の特例を利用するとき

「特定計画山林の特例」(No.4149 山林を相続した場合の納税猶予の特例)を利用するときにも申告が必要です。

 

特定計画山林の特例により、“特定の区域内にある山林を持っていた被相続人から、対象の山林を取得した相続人が、自ら山林の経営を行うとき、当該山林の課税価格の80%相当の相続税の納付が猶予”されます。

 

この効果を受けるためには、相続税の申告書を法定の期限内に提出し、その際、猶予を受ける税額に見合う担保を提供しないといけません。

特定の団体に寄付をしたとき

相続または遺贈で取得した遺産を、「国」「地方公共団体」「公益事業を行う法人」「認定NPO法人」に寄付したとき、または公益信託の信託財産として支出したときは、その分は非課税となります(No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき)。

 

仮に取得した遺産をすべてこれらの団体に寄付したときは、相続税を納める必要はなくなります。

 

ただし、相続税の申告は必要です。
寄付した旨を相続税の申告書に記載し、寄附または支出した財産の明細書なども添付した上でこれを税務署に提出します。

寄付または支出先により適用条件や提出書類が変わってきますので、詳しくは国税庁のホームページ、または税理士に相談しましょう。

相続税の申告が不要なケース

次に、相続税の申告が不要になるケースを紹介していきます。

ポイントは“基礎控除額と遺産の総額の比較”と“税額控除の適用”です。

遺産の総額が基礎控除額以下のとき

相続税申告の必要性を判断するもっとも簡単な方法が、“基礎控除額と遺産総額の比較”です。
そして基礎控除額は、次の計算式に従い算出できます。

 

基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

 

法定相続人が0人で遺産を遺贈により取得したときは、最低額の3,000万円が基礎控除額です。法定相続人が5人いると6,000万円もの基礎控除額が適用できます。

 

実際、相続税を納めるケースは少なくなっています。これは基礎控除が誰でも適用できること、そしてその額が大きいことの影響です。

 

なお、相続放棄をした方がいたとしても、基礎控除額の計算には影響しません。

相続人が5人おり、そのうちの1人が相続放棄をしても、基礎控除額は6,000万円のままです。

 

一方で、法定相続人に養子が含まれるときには要注意です。
基礎控除の計算に含めることができる養子には限りがあるためです。

実子がいるときには養子1人まで、実子がいないときでも養子2人までしか計算に含めることができません。
法定相続人が5人で、うち3人が養子であったとしましょう。この場合は、実子2人+養子1人の合計3人で計算し、基礎控除額は4,800万円になります。

法定相続人5人のすべてが養子だとすれば、養子2人で計算し、基礎控除額は4,200万円になります。

申告が不要な控除を利用して納付額が0円になるとき

配偶者控除や小規模宅地等の特例を利用するときは、納付額が0円であっても申告手続は必要でした。
一方、以下の税額控除を適用して納付すべき額が0円になるときは、申告が不要です。

 

申告不要な税額控除

計算方法等

未成年者控除

・相続人が未成年者のときに適用可能

・「満20歳になるまでの年数」×10万円を控除

・相続税額より大きな控除額となった場合、引き切れない部分は当該未成年者の扶養義務者の相続税額から差し引くことができる

障害者控除

・相続人が85歳未満の障害者のときに適用可能

・「満85歳になるまでの年数」×10万円※を控除

※特別障害者のときは20万円

・相続税額より大きな控除額となった場合、引き切れない部分は当該障害者の扶養義務者の相続税額から差し引くことができる

相次相続控除

・今回の相続開始前10年以内に相続税が課されていたときに適用可能

・前回の相続からの年数が浅いほど、大きな税額控除が適用できる

申告の必要性は税理士に相談

遺産の総額と基礎控除額の比較により、相続税申告の必要性が判断できます。
基礎控除額については簡単に計算をすることができるでしょう。ただ、その計算を行うためには法定相続人の数が定まっていなければなりません。

つまり相続人の調査が適切に行われていることが前提です。必要な戸籍をすべて収集し、そこから情報を読み取る必要があります。
また、遺産の総額に関しても把握するのは簡単ではありません。

遺産は現金や預貯金ばかりとは限らず、評価額の算定に専門知識を要する不動産や有価証券、動産なども含まれます。

 

よって、相続税申告の必要性を判断するにあたっては、相続人の調査や遺産の評価ができる税理士に協力を求めることがリスクも小さくおすすめできます。

 

その他特例や控除を利用する場合も同様です。

適用条件を満たしているかどうかの判断、控除額等の正しい計算を行うためにも、税務のプロによるサポートが必要になるでしょう。

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久川 秀則
所属団体・資格等
  • 平成19年退官、税理士登録
  • 税理士法人 原・久川会計事務所(平塚橋事務所)代表社員 税理士
  • 東京税理士会 荏原支部 所属
  • 東京税理士会 研修講師(非居住者等の税務など)
  • 税理士桜友会 相談部 専門委員
  • 経営支援アドバイザー(弥生会計)
  • 相続手続相談士
  • 終活カウンセラー
略歴
  • 青山学院大学 文学部 英米文学科 卒業
  • 麹町税務署・麻布税務署にて国際税務専門官として国際課税、外資系企業、銀行・証券業の税務調査に従事
  • 東京国税局 課税第二部 法人課税課 源泉所得税審理係長として、大企業の質疑対応、複雑困難な税務調査事例の審理事務に従事
  • 国税庁 調査査察部 国際租税戦略実態解明プロジェクト

    東京国税局 調査第一部 外国法人調査部門の国際税務専門官として、外国企業に対する税務調査を担当~外資系企業や外資系銀行・証券会社などの税務調査、非居住者・租税条約の審理事務に長く携わってきました。

著書
  • Q&A報酬・料金の源泉所得税―事例解説から税務調査まで(大蔵財務協会) 非居住者等のための租税条約ガイドブック―源泉国際課税の重要解説及び主要条文(大蔵財務協会)
  • Q&Aメディア、エンターテイメントビジネスの税務―わかりやすい報酬・料金、非居住者等所得の源泉所得税(大蔵財務協会)

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企業の成長を通じて社会的な地位を得て、収入が増え、
やがて自己実現にいたるまでのお手伝いをいたします。

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事務所名 税理士法人 原・久川会計事務所(平塚橋事務所)
代表者 久川 秀則(ひさかわ ひでのり)
所在地 〒142-0051 東京都品川区平塚3-4-17 1F
電話番号/FAX番号 TEL:03-6410-4418 FAX:03-6410-4420
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