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相続税の申告期限後に気づいた場合の対応と申告義務の時効について

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相続税の申告期限後に気づいた場合の対応と申告義務の時効について

相続税の申告をしないまま期限を過ぎていることに気づき、「そのまま放置しても大丈夫なのか」「いつまで責任を負うのか」と悩まれる方もいます。
しかし相続税の申告や納付はすべての相続人にとっての義務ではありませんし、いずれにしろ期限から5年以上経過している場合には納付の義務がなくなっている可能性が高いです。とはいえ、気が付いた時点で申告義務があるときは時効による逃げ切りを狙うべきではありません。

 

ではどう対応すべきなのか、当記事で詳しく解説していきます。

相続税の申告期限

相続税に関する申告と納付は、「相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」に行わなければなりません。この期間中に被相続人(亡くなった方)の財産を調査し、評価額を算定し、適切な申告書を作成しなければなりません。遺産分割協議などほかの手続きがすべてスムーズにいけば十分な時間を確保できると思われますが、場合によっては期限に気が付いていても間に合わせられないというケースも起こり得ます。

 

なお、一般的に「相続の開始を知った日」とは被相続人が亡くなった日を指しますが、特殊な状況下では亡くなった人は別の日が起算日となります。
たとえば海外に居住していたり、疎遠になっていたりした相続人だと、後日死亡の事実を知ることもあるでしょう。

その場合は実際に死亡の事実を知った日から10ヶ月をカウントします。

申告期限を過ぎてしまうリスク

相続税の申告期限を過ぎてしまうと下記の2種類のペナルティが課せられる可能性があります。

  • 無申告加算税または重加算税
    ・・・期限内に申告しなかった場合、本来納めるべき税額に対して一定割合の加算税が課される。単純な無申告の場合は「無申告加算税(15%~30%)」が課されるが、故意に申告を逃れようとしたなど悪質な行為があった場合にはより重い「重加算税(35%~40%)」が課せられる。
  • 延滞税
    ・・・納付すべき税金を期限内に納付しなかったことに対し課される遅延利息のような性質を持つ税金。納付期限の翌日から納付の日までの期間に応じて納付額が計算される。長期間放置するほど高額になることに注意。

これらのペナルティは二重で課されます。本来納めるべき税額より大幅に負担が増してしまう危険もあるためできるだけ早く対処することが重要です。

相続税の申告義務の確認

相続が発生したからといって、必ずしもすべての相続人に申告義務が生じるわけではありません。

そのため、相続からしばらく経って相続税に関する一切の手続きをしていなかったことに気が付いたとしても、何ら問題がないケースもあるのです。

 

「もう申告期限を過ぎてしまっているからペナルティを受けることになるかも」と心配に思うかもしれませんが、落ち着いてまずは申告義務があるのかどうかを確認しましょう。

義務がある人は1割程度

相続税の申告が必要となるのは、主に、相続や遺贈(場合によっては生前贈与も含む)により取得した財産の合計額が基礎控除額を超える方です。

 

贈与税では1年あたり110万円という基礎控除額でありこれを超えると申告義務が課されますが、贈与税では最低でも3,000万円の基礎控除額です。遺産の総額が相続税に係る基礎控除額を超えないケースが多いため、実際のところ相続の発生に対し申告義務が生じるのは1割程度となっています。

 

具体的には次の計算式により基礎控除額を求めます。

 

[3,000万円+600万円×法定相続人の数]

 

法定相続人が2人いると4,200万円、3人になると4,800万円と大きくなっていきます。

マイホームや預貯金だけだとこの金額を超えないことが多く、特に地方では不動産の評価額も低いため申告が必要になるケースはさらに限定的といえるでしょう。

相続税額が0円になる場合でも注意

遺産の総額が基礎控除額を超えているときは、たとえ最終的な相続税額が0円になると予想されても申告が必要になるかもしれません。

安易に「相続税を納める必要がないから申告も必要ない」と判断しないよう注意してください。

 

たとえば小規模宅地等の特例や配偶者控除などを適用したことで税額0円になっているのであれば申告は省略できません。

 

また、「生前に被相続人から相続時精算課税による贈与財産を受けていた」「相続開始前7年以内に被相続人から贈与を受けていた」「生命保険金を受け取っている」「被相続人の一親等の血族または配偶者以外である」という場合には遺産の総額の計算にも注意してください。
そもそも計算に漏れがあるおそれがあります。
純粋な相続財産ではなくても相続税の計算に含めないといけないケースがありますし、被相続人との血縁関係が離れてくると税額控除前の相続税額を2割増しにしないといけないルールもあります。

 

相続税の計算は複雑であるため税理士に相談して正確な見積もりと申告の要否を判断してもらいましょう。

相続税の納税義務の時効期間

相続税にも「時効」のような概念が存在します。正確には「除斥期間」と呼ばれる法的な仕組みであり、相続税の納付義務に関しては原則として「法定の申告期限から5年間」が経過すると国側の持つ請求権が消滅するルールになっているのです。

 

つまり、相続開始を知った日から約510ヶ月が経過することによって、理論上は納税義務が消滅する可能性があります。

 

ただし、財産を意図的に隠したり、虚偽の申告をしたりするなど、悪質な行為があると判断されたときには除斥期間は「7年」へと延長されます。

7年の期間が適用される主な例は以下のとおりです。

 

  • 財産に関する書類の改ざんや偽造、破棄や隠匿を行った
  • 課税財産の隠匿、架空債務の作出、事実のねつ造による課税財産の圧縮を図った
  • 取引先等と通謀して帳簿書類の改ざんをした
  • 名義預金など実質において被相続人の財産であることを認識しながら申告をしなかった など

 

なおこの期間は、納税義務の確定に係る権利のみならず、すでに納付義務が確定している税金について履行の請求を行う権利に対しても同様となります。

一般的な債権における時効制度との違い

相続税を含む国税の時効は、民法上の一般的な時効制度とは異なります。

 

民法上の時効制度と違って、国税通則法上の制度は「時効の援用(時効を利用するという意思表示)を要しないこと」や「時効の利益を放棄することができないこと」という特徴があります。
そこで、相続税に関する除斥期間を経過すると自動的にその効力が生じ、納税者の意思表示や行為に関わらず義務がなくなります。

 

また、民法では「時効の完成猶予・更新」という概念がありますが、相続税の納税義務を確定させるための権利に関してはこの規定は適用されません。

そのため、一度国税通則法に基づく期間の進行が始まると、法定期間(5年または7年)の経過により確定的に効力が生じるのであって、税務署側の行為によってこれが妨げられるという仕組みにはなっていません。

※すでに確定した納税義務に関する請求(徴収権)については、民法の規定が準用され、督促等を受けることによって時効の完成が猶予されたり時効期間が更新されたりする。督促状が発せられているときは時効が更新され、滞納処分として財産が差し押さえられているときはその間除斥期間は経過しない。

無申告に気が付いたときの対応

義務があるにもかかわらず無申告のまま放置していることに気が付いたとしましょう。

その場合、時間が過ぎるのをただ待つのは避けるべきです。できるだけ早く申告・納付の対応を進めましょう。

 

もし、その時点で除斥期間である5年または7年を経過しているときは対応する義務がなくなっている可能性がありますが、確実に義務がなくなっているかどうかを確認するため税理士に確認してもらいましょう。

時効成立を期待すべきではない

相続税に関しても除斥期間の仕組みが法律上存在しますが、申告義務を履行せず過ごすのは危険です。

 

なぜなら税務署は個人のさまざまな情報を把握しており、無申告や申告漏れを防ぐため調査を行っているためです。

そこで、被相続人が亡くなったという事実、死亡日時点で保有していた不動産等の情報、過去の所得や税金の情報なども知られていると考えて行動すべきです。

 

死亡届の情報は市区町村役場から税務署にも共有されるため、相続の事実自体を税務署が知らないということはありません。

実際、その知らせをきっかけに税務署が調査を行い、相続税申告の必要性が高いと思われる方に対しては「相続のお尋ね」が送られてきます。

 

申告期限を過ぎてしばらく税務署からの連絡がなかったとしても安心はできません。

数ヶ月~数年経ってから税務調査にやってくる可能性もあり、実地調査が行われると無申告であることは高い確率で見つかってしまうでしょう。

 

そのため除斥期間が近づいているとしても自主的な申告・納付をお勧めします。

速やかに申告・納付をする

申告は法律上の義務でもありますし、長期間経過してからのペナルティは負担がより重くなってしまいます。
そこで、すでに期限を過ぎていてもできるだけ早く申告・納付することが重要です。できれば税務調査が入る前に自主的な申告を行いましょう。

これにより加算税が軽減される可能性があります。

 

反対に、相続時精算課税制度を利用していたときには申告を行うことで納め過ぎた贈与税額について還付を受けられる可能性もあります。

 

相続時精算課税とは贈与時点では課税せずその分を相続時に清算するという課税制度ですが、一定額(贈与価額累計2,500万円)を超えた贈与に関しては相続税を概算(一律20%)で支払うことになります。
そのため、相続開始後に正しい値を計算して「本来の相続税額はもっと少なかった」「相続税の負担は0円だった」という結果になったときは概算で支払っていた贈与税分が還付されます。申告をしなければこの還付が受けられません。

期限後申告で注意すること

期限後申告をするときは「配偶者の税額軽減(被相続人の配偶者であれば法定相続分または16,000万円まで税額を軽減できる控除制度)」や「小規模宅地等の特例(自宅や事業用の土地の評価額を大幅に減額できる特例)」の適用も忘れないようにしましょう。
この2つの制度は効果が大きく、相続税の負担を大きく左右する可能性があります。

特に配偶者控除に関してはこの適用を受けることで配偶者の税負担が0円になることも十分に考えられます。

 

原則としてこれらの制度は期限内の申告により適用すべきものとされていますが、期限後申告でも適用は受けられます。

ただし遺産分割協議は終えていなければなりません。

 

また、すでに遺産として受け取った現金等を消費してしまっているときは納税資金の確保も必要になるでしょう。

多額の遺産を受け取っていた場合、数百万円以上の納付義務が課せられることもあります。

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経験・実績豊富!
元国税局専門官が依頼者の味方になります。

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久川 秀則
所属団体・資格等
  • 平成19年退官、税理士登録
  • 久川秀則税理士事務所代表社員 税理士
  • 東京税理士会 荏原支部 所属
  • 東京税理士会 研修講師(非居住者等の税務など)
  • 税理士桜友会 相談部 専門委員
  • 経営支援アドバイザー(弥生会計)
  • 相続手続相談士
  • 終活カウンセラー
略歴
  • 青山学院大学 文学部 英米文学科 卒業
  • 麹町税務署・麻布税務署にて国際税務専門官として国際課税、外資系企業、銀行・証券業の税務調査に従事
  • 東京国税局 課税第二部 法人課税課 源泉所得税審理係長として、大企業の質疑対応、複雑困難な税務調査事例の審理事務に従事
  • 国税庁 調査査察部 国際租税戦略実態解明プロジェクト

    東京国税局 調査第一部 外国法人調査部門の国際税務専門官として、外国企業に対する税務調査を担当~外資系企業や外資系銀行・証券会社などの税務調査、非居住者・租税条約の審理事務に長く携わってきました。

著書
  • Q&A報酬・料金の源泉所得税―事例解説から税務調査まで(大蔵財務協会) 非居住者等のための租税条約ガイドブック―源泉国際課税の重要解説及び主要条文(大蔵財務協会)
  • Q&Aメディア、エンターテイメントビジネスの税務―わかりやすい報酬・料金、非居住者等所得の源泉所得税(大蔵財務協会)

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