未成年者が相続するときに知っておきたいポイントや注意点を解説
未成年者は単独で法律行為を行うことができません。この問題は相続にも絡んできます。
遺産分割協議や関連する手続を 1人で進めることができず、親権を持つ方による代理、あるいは特別代理人による代理が必要になるのです。
一方で相続税に関しては優遇措置が設けられているなど、相続をするのが未成年者かどうかによって手続方法などが変わってきます。
知っておきたいポイントをここにまとめますので、相続人の中に未成年者がいるときはぜひ参考にしてください。
遺産分割協議の進め方
相続をするのが未成年者かどうかで変わる一番のポイントは、遺産分割協議の進め方です。以下の点に留意して手続を進めていきましょう。
未成年者は協議に参加できない
未成年者が相続人となる場合、「親権者」が遺産分割協議の参加者となります。
その他、成年後見制度を利用している方の場合だと「成年後見人」、行方不明者に関しては「不在者財産管理人」が協議に参加します。
ただ、 [未成年者と親権者 ]あるいは [成年被後見人と成年後見人 ]が同時に相続人となるときは注意が必要です。
遺産分割協議では各自が取得する財産の内容や割合を決めることになりますので、参加者同士は利害が対立する関係性にあります。
仮に未成年者と親権者の 2人が相続人であったとしましょう。
未成年者の代理として親権者が遺産分割の方法を決めることができてしまうと「自分の取り分を多くしよう」といったこともできてしまいます。
実際にそのような不当な分割をしようとする方ばかりではありませんが、こうした問題を仕組み上防ぐために「特別代理人」の制度が設けられています。利益相反(利害が対立する状態)が起こる場面では親権者や成年後見人が法定代理人として遺産分割を行うのではなく、特別代理人を選任してその方に協議に参加してもらうのです。
特別代理人の選任方法
特別代理人が必要な場合、家庭裁判所にて「特別代理人選任の申し立て」を行わないといけません。
※後見監督人が選任されているときはその後見監督人が代理で参加するため特別代理人の選任は不要。
特別代理人選任の申立について | |
---|---|
申立ができる方 | 成年後見人 |
15歳以上の未成年者 | |
親族 | |
その他利害関係人 | |
必要書類 | 申立書 |
承諾書 | |
申立人と未成年者の住民票 | |
特別代理人候補者の住民票または戸籍附票 | |
遺産分割協議書案 | |
遺産に関する資料(不動産なら不動産登記事項証明書や固定資産評価証明書、預金なら通帳の写しや残高証明書 など) | |
手数料 | 収入印紙 800円分 |
郵便切手代 数百円程 ※申し立て先の家庭裁判所で要確認 |
審理期間として数週間程度は必要です。そのため時間に余裕を持って申し立てを行うよう注意してください。
また、審理の方法は事案により異なります。
提出した書面のみを確認するケース(書面審理)もあれば、家庭裁判所に出向いて直接説明をしないといけないケース(尋問)もあります。
遺産分割協議書の作成
親権者が代わりに遺産分割協議に参加した場合も、特別代理人を選任して協議を行った場合も、「遺産分割協議書」を作成しましょう。
この文書には「誰が・何を・どれだけ相続するのか」を明確に記します。
遺産分割協議書を作成することでこの事実を客観的に証明することが可能となります。後々揉める事態を予防する役割があるのです。
そして契約書と同じで、当事者が合意をしたということを示すために遺産分割協議に参加した方が署名・捺印を行います。
相続人に未成年者がいるときは、その未成年者ではなく「親権者または特別代理人が署名・捺印」を行いましょう。
前配偶者との子にも注意
亡くなった方に子どもがいる場合、遺産分割協議に参加することになりますが、その子どもは現在の配偶者との間で生まれた子どもに限定されません。
前の配偶者との子どもがいたのなら、当該人物についても遺産分割協議に参加する権利が与えられます。
そして前配偶者との子どもについては現在の配偶者が親権を持ちませんので、代理で協議を進めることはできません。
そこで親権者である前配偶者がその子の代わりに協議に参加してくるケースもあります。
例)被相続人Aには配偶者B、前配偶者Xがいる。AとBの間には未成年者である子Cがいる。AとXの間には未成年者である子Yがいる。
- このときの法定相続人はB・C・Yである。
- Cは遺産分割協議には参加せず親権者であるBが代理人になるのが原則であるところ、BとCは利益相反の関係にあることから、特別代理人の選任が必要になる。
- Yに関しても未成年者であるが、親権を持っているのはBではなくXであり、Xが遺産分割協議に参加してもX-Y間の利益相反はない。そこでYの親権者Xが原則通り遺産分割協議に参加する。
・・・結果的として、本件相続における遺産分割協議への参加者は、①B、②特別代理人、③Xとなる。
包括遺贈にも注意
遺言書で「〇〇に遺産の半分を譲与する」などと割合で遺贈の指定があったとしましょう。
このときの遺贈は「包括遺贈」と呼ばれ、これを受ける方は「包括受遺者」と呼ばれます。
包括受遺者は指定された割合に限り相続人と同等の権限を持ちますので、遺産分割協議にも参加することができます。
※特定の財産を指定してする遺贈(特定遺贈)の受遺者は協議に参加しない。
ただ、包括受遺者が未成年者であるときは、法定相続人が未成年者である場合と同じ問題に直面します。
未成年者の代わりに親権者、または特別代理人が参加をします。
相続税における未成年者控除の適用
相続税における「未成年者控除」とは、いくつかある税額控除の 1つで、未成年者のみが適用を受けられる控除制度のことです。
年齢に応じて控除額が異なり、場合によっては 100万円を超える額を納める必要がなくなるなど、大きな節税効果も期待できるものです。
そのため未成年者が相続するときは、相続税の計算をするときにこの控除の適用も忘れないようにしましょう。
計算方法
未成年者控除の額は、次の計算式で求めることができます。
未成年者控除の額 = 10万円 ×( 18歳-本人の年齢)
この計算をするときに注意しておきたい点が 2つあります。
1つは「 18歳までの年齢を算出した結果に端数があるときは切り上げる」という点です。
下表のように、年齢を代入するとき先に 1歳未満の端数を切り捨てておくというやり方でも同じ結果が得られます。
この場合、例えば生後 10ヶ月なら 1歳未満ですので 0歳として計算ができますし、 17歳 4月なら「 4月」部分を切り捨てて 17歳として計算ができます。
もう 1つの注意点は「相続開始時点で生まれていない胎児も適用対象」という点です。
胎児もその後生まれて 0歳の未成年者となることが予想されますので、計算式にも 0歳を代入して控除額を計算します。
以上を整理すると次のように例示できます。
子どもの年齢 | 控除額 |
---|---|
胎児 | 10万円×( 18歳- 0歳) = 10万円× 18 = 180万円 |
生後 10ヶ月 | 10万円 ×( 18歳- 0歳) = 10万円 ×18 = 180万円 |
生後 12ヶ月 | 10万円 ×( 18歳- 1歳) = 10万円 ×17 = 170万円 |
10歳 1月 | 10万円 ×( 18歳- 10歳) = 10万円 ×8 = 80万円 |
17歳 4月 | 10万円 ×( 18歳- 17歳) = 10万円 ×1 = 10万円 |
18歳 0月 | 適用なし |
適用条件
被相続人の子どもであれば基本的に未成年者控除の適用を受けられます。
ただ、適用については法律で厳格に規律されておりますので、未成年者であっても法定の条件を満たすことができなければその適用を受けられません。
まず、大前提として「 18歳未満であること」は満たさないといけません。
2022年 4月 1日より前は 20歳からが成人というルールでしたが、年齢が引き下げられて現在では 18歳から成人となっている点には留意してください。
その他次の条件にも要注意です。
《 未成年者控除の適用条件 》
- 法定相続人であること
- 「受遺者(遺言による指定で遺産を受け取る方)」では条件を満たさない。
例:法定相続人が被相続人の配偶者と子であって、孫に遺産を譲与する旨の遺言があるとき、孫は遺産を受け取れるが法定相続人ではないため未成年者控除の適用を受けられない。 - 相続放棄をしても条件は満たせる
例:法定相続人が被相続人の配偶者と子であって、子に遺産を譲与する旨の遺言もあるとき、子は相続放棄をしても受遺者として遺産を受け取ることはできる。このとき未成年者控除の適用を受けられる。
- 「受遺者(遺言による指定で遺産を受け取る方)」では条件を満たさない。
- 日本国内に住所があること
- 相続をした時点での住所で評価する
- 日本に住所がなくても、日本国籍や過去 10年以内の住所によっては適用を受けられることもある
- 日本に住所があっても、未成年者が一時居住者であって被相続人も外国人被相続人(または非居住被相続人)であるなら適用は受けられない
※一時居住者:在留資格に基づいて日本に滞在していて、前 15年以内に日本に住所を持っていた期間が合計 10年以下の者。
親などが適用を受けられるケース
未成年者控除では、最大で 180万円もの負担を軽減することができます。さらに、その恩恵は未成年者を扶養する親にまで及びます。
もし控除額を最大まで活用することができなかったとき、残額を親等に使うことも認められているのです。
遺産分割をするときはこの点も考慮しておくと良いでしょう。
例えば、控除可能額が 150万円、子の相続税額が 100万円であったとしましょう。このとき未成年者控除の適用によって子の納税分は 0円となります。
控除可能額を 50万円残したままそれ以上差し引くことができなくなりましたので、この場合は 50万円を親の税額から差し引くことが認められます。
仮に未成年者の親がいなくても、未成年者の祖父・祖母・兄弟姉妹など「 3親等内の親族」であれば適用することができます。
調査手続や相続登記の進め方
遺産分割を経て、未成年者が不動産を取得することもあります。
その時点で所有権は移転するのですが、不動産に関してはその権利を公示するために登記をしないといけません。
法務局で登記申請の手続を進めることになりますが、やはり未成年者だと自らこれを行うことができません。そこで親権者が法定代理人として手続を進めます。
このときは代理人としての権限を証明しないといけませんので、親権を持つ親などは戸籍謄本を取得しておきましょう。
これによって親権を証明し、相続登記の申請を行うことができます。
また、相続登記のほかにもさまざまな相続手続が発生します。
遺産分割協議を行う前には相続人の調査や遺産の調査も進める必要があるところ、相続人を調査するには戸籍謄本等を取得する必要があります。
多くの場合親権者が進めていくことになると思われますが、戸籍謄本等に関しては、未成年者でも意思の確認が取れる状態にあれば取得することができます。
一方、遺産調査の手続だと民間の企業等とやり取りを行うこともあるでしょう。このときは、未成年者だと代理人を求められる可能性もあります。
未成年者だけでできることには限りがありますので、できるだけ身近な方が代理するなどサポートをしていかないといけません。