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賃貸物件の相続!遺産分割前の家賃収入は誰のものか

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賃貸物件の相続!遺産分割前の家賃収入は誰のものか

亡くなった方が賃貸物件を管理していた場合、そこから発生する家賃収入に注意が必要です。

相続開始前後、遺産分割前後で取り扱いが異なり、収入を取得できる人物が異なります。

 

ここで家賃収入に関する相続の問題について解説していきますので、賃貸物件を持つ方、そして賃貸物件を持つ方の相続人はチェックしていただければと思います。

生前の家賃収入|相続財産になる

まず相続開始前に発生した家賃収入についてですが、このときは被相続人となる方が存命ですので、受け取った家賃も相続財産を構成する預金等の一部になります。利益率が高く賃貸に出している期間が長いほど相続財産も多くなり、相続人等が受け取れる財産が増えます。

 

家賃は当月分を前月中に支払うケースが多く、相続が開始される月分が先に支払われていることも珍しくありません。例えば 5月分の家賃を4月 20日に支払っており、相続が 515日に発生したとしましょう。 4月に支払った家賃は相続開始後の使用分も含んでいますが、すでに支払い期日を迎えており権利が確定していることから、それ以前の家賃収入同様に相続財産へと組み込まれます。

 

これに対し 515日以降に支払われる家賃については、後述するように、相続人または遺産分割で賃貸物件を取得した方へと帰属します。

未回収の家賃も相続の対象

支払い期日までに家賃が支払われないケースもあります。

滞納を繰り返す借主がいると、相続開始時点でまだ回収できていない過去の家賃分が残っていることもあるのです。

 

ただ、このときの家賃に関しても取り扱いは変わりません。すでに家賃を請求する権利が確定していますので、相続財産として遺産分割の対象になります。

準確定申告に注意

家賃収入のある被相続人が亡くなったときは「準確定申告」に注意しましょう。

 

一定以上の家賃収入(不動産所得)を得ている方は毎年確定申告をしており、 1年間で得た利益(所得)を計算し、所得税額の申告と納付を行っています。

しかし課税期間の途中で亡くなることで、被相続人自身が申告および納税の義務を果たすことができなくなってしまいます。
そこで相続人が代わりに途中までの申告作業を行わなければならず、このときの申告を準確定申告と呼びます。

 

準確定申告については相続開始から 4ヶ月以内という期限が設けられていますので、税理士に協力を求めるなどして確実に処理を済ませられるようにしましょう。

相続開始後|遺言書の有無で異なる

相続開始後、つまり被相続人が亡くなった後に発生した家賃収入に関しては、処理に注意が必要です。

それ以前の家賃収入とは異なり遺産分割協議で分けるべき相続財産には入りません。

 

遺言書で指定があるときは受遺者が、指定がないときは相続人が直接取得することになります。

遺言書があるときは受遺者が家賃収入を取得

まずは「遺言書で賃貸物件の取得者が指定されているケース」について見ていきます。

 

このケースでは遺言の効力として、指定を受けた特定の人物が賃貸物件を取得することができます。

遺産分割で協議をする必要がありませんので、相続開始の時点で賃貸物件の帰属先が決定します。

※受遺者は遺贈を放棄することもできる。

 

もし亡くなった方が「賃貸物件 Aは、長男に遺贈する。」と遺言書に記載していると、相続開始後に賃貸物件 Aから生じた家賃収入も長男が取得することになります。自分が持つ物件から家賃収入が発生したことになりますので、家賃収入も当然に手に入れることができるのです。

 

ただ、遺贈を受けたときはその分法定相続分が減額されてしまう点に留意しましょう。

民法では遺贈を含む特別の利益を「特別受益」として定め、特別受益分を控除した残額が相続分になる旨が規定されています。
評価額の高い賃貸物件を取得した場合ほかの財産が受け取れなくなる可能性もありますので、これを避けたいのであれば被相続人が「相続分を控除しない旨も記載しておく」あるいは「法定相続分と異なる相続分を指定しておく」などの対応を取る必要があります。

遺言書がないときは法定相続分で家賃収入を取得

次に「遺言書がないケース」または「遺言書で賃貸物件に関する記載がないケース」について見ていきます。

 

遺言書で指定がないとき、相続財産は遺産分割協議を経て相続人たちが取得していくことになります。そして原則として、遺産分割で取得した財産は相続開始に遡って相続したものと扱われるのですが、そうなると遺産分割で賃貸物件を取得した方に家賃収入が帰属するとも考えられそうです。

 

しかし実際のところ家賃収入は遺産と別個に考える必要があり、「法定相続分に応じて相続人各自へ帰属する」と考えられています。

そのため相続開始から間をおいてなされた遺産分割の影響を受けず、賃貸物件の取得とは関係なく各自が取得します。

 

なお、法定相続分は相続人の組み合わせによって変動し、必ずしも均等に分割するとは限りません。

 

《 相続人の組み合わせと法定相続分 》

  • 配偶者と子どもは「1:1」
  • 配偶者と親などの直系尊属は「2:1」
  • 配偶者と兄弟姉妹は「3:1」

※子ども・直系尊属・兄弟姉妹同士は均等に分割

 

つまり、相続開始後の家賃収入が 60万円で相続人に配偶者・子ども 2人がいるときは、配偶者が 30万円、子どもがそれぞれ 15万円ずつ取得することになります。

相続人が配偶者と両親の場合、配偶者が 40万円、親がそれぞれ 10万円ずつ取得。

相続人が配偶者と弟・妹の場合、配偶者が 45万円、兄弟姉妹がそれぞれ 7.5万円ずつ取得します。

家賃収入の管理に注意

相続開始から遺産分割前までの家賃収入は各相続人が受け取る権利を持ちますが、口座の管理をしている相続人などが家賃を渡してくれないこともあります。

そんなときは弁護士に相談するなどして支払うように求めましょう。

弁護士を介した説得により支払ってくれることも多いですし、それでも支払ってくれないときは訴訟により損害賠償請求を行います。

遺産分割協議後|賃貸物件を取得した方の財産

遺産分割協議を行い、誰が賃貸物件を取得するのか定め終わったとしましょう。この時点以降から発生する家賃収入に関しては、その取得者のものとなります。

賃貸物件があるときの遺産分割方法

不動産の遺産分割方法にもいろいろパターンがあります。 1人の方がまるまる取得するパターンもあれば、複数人で共有するパターンもあります。

 

不動産を共有すると、それが賃貸物件の場合は、持分に対応した家賃収入を各共有者が取得できます。

 

ただ、賃貸物件に限らず基本的に不動産の共有は避けた方が良いと考えられています。

共有をすべき積極的な理由があるのなら別ですが、「みんなで家賃収入を受け取りたいから」と特段の理由なく共有することは極力避けましょう。
共有してしまうと、それ以降の管理が大変になってしまうのです。共有者が単独で決断できることが限られてしまい、共有者についてさらに相続が発生すると共有関係がさらに複雑化し、不動産の有効活用が困難になる危険性もあります。

賃貸物件を取得した方の相続税申告

不動産の資産価値がとても高い場合、相続税の負担も相応に大きくなります。

そして取得した不動産とは別に納税資金が必要となりますので、現金の負担が重くのしかかります。

 

特に土地も一緒に取得するときは相続税評価額が高くなりやすいため要注意です。

現金や預貯金も一緒に相続しないと、元々持っていた財産から納税資金を支出しないといけません。

 

ただ、賃貸に出している不動産だと所有者自身が使用できる割合が少なくなりますので、一般的には節税効果が大きいと考えられています。
自用地としての評価額が 1億円でも、借地権割合( 60%~ 90%になることが多い。)を考慮して数千万円分を減額することができるのです。
さらに「小規模宅地等の特例」の適用を受けられることもあり、この場合は相続税評価額を最大 80%下げることができますので、さらに相続税の負担は軽減できます。

賃貸物件を取得した方の確定申告

賃貸物件を取得した方は、当該物件に係る相続税を申告するだけでなく、家賃収入による利益に応じて確定申告も毎年行う必要があります。

 

会社勤めしており普段確定申告を行っていない方であって、家賃収入に基づく所得が「年間 20万円以下」であれば、確定申告の必要はありません。

設定している家賃が低額で費用も多い場合にはこの基準以下に収まる可能性もありますが、多くの場合は確定申告が必要になると思われます。

 

判断を誤って無申告のまま放置してしまうと無申告加算税が徴収されてしまうため、税理士に計算を依頼し、確定申告の必要性を判断してもらうようにしましょう。

固定資産税の負担者についても同様に考える

賃貸物件でも、マイホームとして使っている宅地・家屋でも、維持費として固定資産税の支払いが毎年必要です。

この負担者についての考え方ですが家賃収入と同様に考えることができ、固定資産税を支払うべき人物は次のように整理できます。

 

  • 相続開始前は被相続人となる方(元々の名義人)が支払う
  • 相続開始から遺産分割前
    • 遺言書で不動産の取得者が指定されている場合は、その取得者が支払う
    • 不動産の取得者が指定されていない場合は、各相続人が法定相続分に従い負担を負う
  • 遺産分割後は不動産の取得者が支払う

 

なお、固定資産税の支払い義務は、 11日時点での所有者にあります。そのためある年の 2月に所有者が死亡しても、被相続人に納税義務が課されます。

4月・ 5月頃に送付される納税通知書も被相続人の宛名のままですが、混乱のないようにしましょう。

 

そして、未払いになっている固定資産税の支払い義務や、相続開始から遺産分割協議が確定するまでに 11日を過ぎた場合の支払い義務に関しては、相続人が法定相続分で負担を負うこととなります。
そこで遺産に賃貸物件が含まれているときは家賃収入などプラスの面にのみ着目するのではなく、固定資産税やその他修繕費など完済できていない債務が残っていないかどうかも調べることが大事です。

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久川 秀則
所属団体・資格等
  • 平成19年退官、税理士登録
  • 久川秀則税理士事務所代表社員 税理士
  • 東京税理士会 荏原支部 所属
  • 東京税理士会 研修講師(非居住者等の税務など)
  • 税理士桜友会 相談部 専門委員
  • 経営支援アドバイザー(弥生会計)
  • 相続手続相談士
  • 終活カウンセラー
略歴
  • 青山学院大学 文学部 英米文学科 卒業
  • 麹町税務署・麻布税務署にて国際税務専門官として国際課税、外資系企業、銀行・証券業の税務調査に従事
  • 東京国税局 課税第二部 法人課税課 源泉所得税審理係長として、大企業の質疑対応、複雑困難な税務調査事例の審理事務に従事
  • 国税庁 調査査察部 国際租税戦略実態解明プロジェクト

    東京国税局 調査第一部 外国法人調査部門の国際税務専門官として、外国企業に対する税務調査を担当~外資系企業や外資系銀行・証券会社などの税務調査、非居住者・租税条約の審理事務に長く携わってきました。

著書
  • Q&A報酬・料金の源泉所得税―事例解説から税務調査まで(大蔵財務協会) 非居住者等のための租税条約ガイドブック―源泉国際課税の重要解説及び主要条文(大蔵財務協会)
  • Q&Aメディア、エンターテイメントビジネスの税務―わかりやすい報酬・料金、非居住者等所得の源泉所得税(大蔵財務協会)

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